フランスって本当に休みが長くて、長期休暇がたくさんあるの?
みんな長期で休んじゃうわけ?
なぜそんなに休めるの?
こんにちは、まのん(@ManonYoshino)です。
ヨーロッパの国々では夏にまとまって休みをとる人が多いんですが、フランス人たちの長い休みは特に有名かもしれません。
「バカンス」という響きがなんとなく優雅ですよね。
地中海沿いはセレブなイメージのビーチリゾートが並び、大西洋側のバスク地方の海岸はサーファーのメッカとして世界的に有名。
でも、イメージだけでなく、フランス人はみんな、本当にまとまった休暇をとって人生を謳歌しているようです。
日本に事務所を構えるヨーロッパ系企業の駐在員たちも、1ヶ月から2ヶ月、どーんとまとめて帰省してしまいます。
日本人の感覚からすると、「なんでそんなに休めるの?」という感じ。
うらやましいけど、そんなに休んじゃって大丈夫なのかなとも思いませんか?
この記事では、
フランス人が長い休みを取れる理由
フランスの長期休暇のメリットとデメリット
についてご紹介します。
目次
フランス人の休みは本当に長いのか?
これは本当です。
一般の会社員で、有給休暇に土日をプラスすると年間合計で5週間は休めます。
そして、有給休暇は残さずきっちり取る人がほとんどですね。
子供たちの長期休暇
まず、日本と大きく違うところは子供たちの長期休暇が頻繁にある、という点です。
フランスの学校は、9月が新学期。
▶︎ 最初の休暇は、万聖節休暇で10月下旬から11月初旬にかけての2週間。
▶︎▶︎ 次の休暇は、12月下旬から1月1日までの2週間。
▶︎▶︎▶︎ 3回目の休暇は冬休みで、2月中旬から3月上旬のあいだの2週間。
▶︎▶︎▶︎▶︎ 4回目の休暇は春休みで、4月上旬から5月初旬のあいだの2週間。
▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎ そしてグランバカンスと呼ばれる夏休みが、7月と8月の2ヶ月。
合わせると年間約4ヶ月が休みということになります。
▼ フランスの小学生ライフ、ちょっとのぞいてみませんか? >> 【フランスの小学校】日本との違いは「日仏の常識の違い」そのもの!
社会人の長期休暇
一般の会社員の有給休暇は年間25日が基本。
これだけで、土日をはさむめば5週間の休暇がとれることになります。
「え〜っつ、5週間なんてすご〜い!」
と思いますよね。
でも、有給休暇付与日数だけ言えば、日本企業だって負けていません。
正社員の場合、年次有給休暇が20日間(6.5年以上継続で勤務した場合)。
残った休暇は翌年に繰越が可能だったりするので、最大40日の有給休暇がもらえるわけです。
問題は、有給休暇があっても連続長期休暇が取れない…という点でしょう。
フランスは、残った休暇を翌年に繰越ことが(ほぼ)できないので、きちんと消化する人が多いんですね。
▼ フランス人は長い休暇に何をするの?フランスの「普通の人」のバカンスの様子はこちらから! >> フランス人は休みに何をする?バカンス大好きなフランス人の長期休暇の過ごし方
フランス人の休み方は日本と違う
フランス人は、日本人と比べると休み方が違うように思えます。
どんなところがフランス的なのか、ちょっとみてみましょう。
休日の過ごし方
フランスでは、週末の過ごし方からして日本とはちょっと違うんです。
東京に慣れてしまっていると、何年フランスに暮らしても「フランスの日曜日」を退屈に感じてしまうことも…。
フランスの週末とは?
欧米のキリスト教国では、もともと日曜日は完全に安息日。
教会で祈り、家族で過ごす静かな日なんです。
最近でこそ日曜営業(半日の場合も)のスーパーや量販店もありますが、たいていの商店はお休み。
日曜日でも街中のどこかしらで必ず開いている店があるのは、花屋とパン屋と薬局くらいです。
土曜日と日曜日の違い
土曜日 ➡︎ | 動の日(買い物・家事・お出かけ) |
日曜日 ➡︎ | 静の日(家族と過ごす安息日) |
土曜日は「活動する日」。
共稼ぎが当たり前の国なので、土曜日は家の仕事で忙しい日です。
食料品の買い出しや、子供の学用品や服を買いに行ったり、家電量販店に新しい冷蔵庫をチェックしに行ったり、美容院に行ったりとフル稼働。
溜まっている洗濯物とアイロンがけは土曜日に…、という人もいるでしょう。
子供を連れて食品の買い出しや公園遊びをするお父さんたちの姿もよく見かけます。
そして日曜日は、どちらかというと「静の日」。
家族や友達とランチをしたり、散歩をしたりとのんびり過ごすというのがフランス的週末なんです。
土曜日は、お金を使う日といえます。
そして、日曜日は、人と語り自然と触れ合う日です。
フランスと日本の祝祭日
フランス人の休暇は長いですが、祝祭日の数は日本よりずっと少ないんですね。
日本の祝祭日は16日。
いっぽうのフランスは11日。
「休めない国」と思われている日本ですが、祝祭日の数は世界一。
さらに、もし祝日が日曜日に重なった場合、日本だと翌月曜日が振替休日になりますよね。
でも、フランスの場合はきっちりしていて、祝祭日が日曜に重なった場合でも振替休日はありません。
なんと2022年は祝祭日が3回も日曜日に当たるため、実質8日になってしまうんです。
フランスの祝祭日、半数以上がキリスト教関連です。
日本の場合は、「記念日」がベースになっているものがほとんど。
二つの国を比べてみると、フランスのキリスト教の影響の強さがわかります。
有給休暇の使いかたと過ごし方
フランス人はバカンス好きといっても、闇雲に休んでいるわけではありません。
ちゃんと有給休暇を最大限に使って休んでいるんです。
フランスの職場は融通が利く
日本の有給休暇は、半日単位からとれますよね。
でも、一般企業では病欠も有給休暇から消化することが多いのではないでしょうか。
フランスでは、平日日中にちょっと私用がある場合など、ランチタイムを延長したり就業時間を延ばしたりして臨機応変にできることも。
(これは、アメリカやカナダでも同様でした。自己裁量で勤務時間をずらしてもOKなので通院とか、子供の用事とかに便利です。)
なので、有給休暇は「本当に休暇」として使えるみたいですよ。
フランス的長期休暇
日本だと学校が休みでも何かしら宿題や課外活動がありますよね。
真夏の炎天下に「地域清掃」などに駆り出されたり、毎日部活があったり。
フランスは、休みは「日常を休むため」にあります。
なので、基本、宿題や学校の課外活動は一切ありません。
もちろん登校日なんていうものもなし。
先生も完全バカンス。
新年度の教材の準備のために出勤する、なんていう話は聞いたことがないですし、学校も閉められています。
すごい先生になると、新学期始まってから教科書の発注をするため、届くのが数ヶ月先だったり。
そして、多くの場合、長期休暇でゴージャス旅はしないようです。
高級ホテルでエステ三昧、食事は星付きレストラン…なんていうのは、外国人の旅行者ばかりかもしれないですよ。
お金を使わずに、できるだけ長くゆっくり休むというのがフランス的バカンスの真髄かと思います。
フランス人が堂々と休む理由
日本だって、会社員なら有給休暇の日数は十分すぎるほどあります。
毎年40日の有給休暇を取得している人も多いでしょう。
土日を除いて40日って、8週間ですよ。
すごいですよね。
日本では「すみませんが、お休みを…」と遠慮しながら休暇を取ることが多いですが、フランスでは誰もそんなことを気にしません。
休みは当然の権利
有給休暇は「取らせていただく」ものではなく、「働いたら休むのはあたりまえ!」という考えがハッキリしているフランス。
有給休暇も当然の権利なので、最大限に持てる権利を全うします。
日本でも、会社を退職するときに、「残った有給を買い取ってもらう」ことがあるかと思います。
その1日あたりの金額にびっくりする人もいるのではないでしょうか。
年収を実労働日で割ってみると、自分の日当がわかりますよね。
その金額が有給休暇1日の価値。
使いきれずに捨ててるなんて本当にもったいないことなんです。
モノを無駄にせずしっかり使い切る精神のフランス人は、休暇も無駄にしないんですね(笑)。
同調圧力がないので休みやすい
日本のオフィスって、いいところもたくさんあるんですが、働きにくい文化もありますよね。
そのひとつが、同調圧力。
「みんなするから、こうするべき」
「だれもしていないから、してはいけない」
的な…。
個人主義が徹底しているフランスでは、そういう同調圧力を感じずに休むことができるんですね。
子供の頃からバカンス至上主義がしっかり根付いている、という背景もあるでしょう。
フランス的スピリット
だいたいが快楽主義のフランス人。
自分の感情や欲望に正直、ともいえます。
だからアムール(愛)の国なんて呼ばれるんですよね。
芸術を愛し、美食を愛する国民性。
彼らを観察していると、人生を楽しみたいという欲望が最優先なんだなあと感じることが多いです。
そして、何よりも個人と家族優先。
だから、老いも若きも誰にも気兼ねせずに人生と休みを謳歌するんです。
「遠慮」とか「謙虚」とかって、彼らのボキャブラリーにないんじゃないかなとも思います(笑)。
フランスの長期休暇のメリット
フランス人の長期休暇、良いことも多いですが、もちろん逆もあります。
まずは、長期休暇のメリットからご紹介しましょう。
家族や親戚、友人と時間を過ごせる
長いバカンス期間には、両親の家や義両親の家、兄弟の家などに長期滞在するケースが多いようです。
先祖代々の「田舎の家(メゾン・ド・カンパーニュ。別荘として維持している家庭も多い)」で家族や親戚が集まる機会も多い夏。
友達家族を誘って一緒に過ごしたりもします。
夏の長いバカンスや、クリスマス休暇は、家族や親戚、友人たちと旧交を深める良いチャンスなんです。
ゆったり過ごせる
日本人の休みは、1日から数日と、期間が短いため「何かをするために、休暇を取る」状態になりがち。
フランス人の休みは2週間から4週間まとめて取るので、本当に時間がふんだんにあります。
ゆっくり時間を気にせず、本来の自分のペースで過ごせるのは大きなメリットではないでしょうか。
趣味を追求できる
まとまって休めるフランスでは、趣味を追求できるというメリットもあります。
日曜大工が好きな人は、家のリフォームを手掛けたり。
登山が好きな人は、期間を気にせずアルプス縦走の旅に出たり。
セーリング好きな人は、ヨットで1ヶ月暮らしてみたり。
冬のシーズン中のスキー場は、週単位で滞在する家族連れで賑わいます。
毎年1〜2週間は子供たちもスキー教室に。
幼い頃から毎年繰り返し習うので、あっという間に大人顔負けの滑りをする子も多いです。
フランスの長期休暇のデメリット
フランス人が、みんなで同じような時期に長期休暇をとることによるデメリットもけっこうあります。
商店も長期休みを取る
長期バカンスは公務員や会社員だけの特権ではありません。
もちろん、サービス業の人も、個人商店もちゃんと休みます。
フランス人にとって必要不可欠な「パン屋」ですが、必ずどこかのお店は開いているので、困ることはないようになっています。
でも、「行きつけのパン屋」が1ヶ月休業に入ると、けっこうガッカリだったりしますね。
ショッピングモールの店舗や、チェーン店の場合、店員が交代で休暇を取るため、1ヶ月ずっとお休みになることはありません。
医師も長期で休む
夏休みシーズンに困るのがこれ。
お医者さんたちも長期でバカンスを取るので、病気の時にアタフタします。
専門医の先生の予約がなかなか取れないのは、年中同じですが、かかりつけ医の先生もお休みになってしまうんですね。
子供の急病で、かかりつけの小児科医の先生が休みになってしまって、困ったこともあります。
「パリでは夏は病気をするな」
というくらい。
そして、8月の終わりに診療が再開されますが、どっと混み合うため今度は予約が取れません。
ところで、子供たちのスポーツ系の習い事の申し込みには、医師の診断書がいります。習い事の申込みは新学期9月に一斉開始。
なので、診断書をもらうためには、6月中には新学期の診療予約をしておく必要があるんですね。
公共交通機関もダイヤが変わる
7月と8月は都市のバスやトラムなど、公共交通機関も夏ダイヤに変わります。
通勤通学の利用客が大幅に減るからですが、これ、利用者にとっては困り物。
なかには、夏ダイヤ期間はバスが全く走らなくなる路線も。
車で移動できる人はいいですが、公共交通機関に頼っている人にとっては、大変ですよね。
9月の体力的・心理的リカバリーが大変
子供たち、7〜8週間ごとに2週間の休みがあります。
小学校から拘束時間が長いので、休みがないと疲れてしまうという意見もありますが、リズムが狂う狂う!
夏に2ヶ月のんびりした後は、本当に体力的・心理的なリカバリーは大変。
秋になると、どんどん日が短くなるフランスでは、朝起きると真っ暗という期間が半年も続くんですよね。
9月の新年度は、日の出が遅くなり始めた頃なので、より一層「休みのままでいたい」気分になりがちです。
主婦はいつも忙しい
休暇が終わると、ホッとするのは家庭の主婦。
子供たちが家にいると、3度の食事の支度や、あれやこれやと用事が増えますよね。
夫がいても、やっぱり増える。
おまけにフランスの長期休みは、「自炊」が基本。
別荘に行こうが、景勝地に行こうが、ホテル滞在以外は3度の食事の支度と掃除洗濯がつきものなんです。
特に、メゾン・ド・カンパーニュ(田舎の家)や山荘を持っている場合、滞在中に家のメンテをしたり大掃除をしたりという仕事が待っています。
また、そういう場合はシーツやタオルなども自分たちで準備し、使ったら綺麗に洗ってアイロンがけ。
でも、フランス人にとっては、それが楽しいらしいですよ。
日本人からしたら、たまの休みは上げ膳据え膳の温泉旅館でまったりしたいなあと思ってしまいますが…。
筆者個人としては、長い休みはいらないので、料理の支度の心配も掃除もしなくて済む日本式のお休みが好きです。
まとめ
長い休みが有名なフランス人のバカンス。
そもそもなぜ、そんなに長期で休めてしまうのかについてご紹介しました。
まとまった期間きちんと休んで英気を養うというのは、ヨーロッパの文化のひとつ。
フランス人は人生を楽しむのが大好きなので、バカンスを何より大切にしているよう。
なかなか日本では真似できませんが、お金をたくさんかけずにバカンスを楽しむフランス人から学ぶものもあるような気がします。