フランスで生活したことのある人がよく口にするあの噂。
「フランス人は意外と衛生的じゃないよ。
お風呂やシャワーに毎日は入らないって人が多い!」
これって本当なんでしょうか?
こんにちは、フランス人と生活して15年のまのん(@ManonYoshino)です。
フランスといえば、「モードやグルメでお洒落なイメージしかない」という方も多いかもしれませんよね。
でも、「フランス人は不衛生」という黒いレッテルも貼られているのも確かなんです。ちょっと気になりますね。。。
この記事では、フランスのお風呂やシャワー、入浴文化について探ってみたいと思います。
目次
フランスの入浴文化への疑問
「フランス人はあまり入浴しない」という噂があります。
「昔から、体をあまり洗わないから臭い消しに香水が盛んに作られたんだよ」とも言います。
フランス人はあまり入浴しない?
これは、本当です。ただ、入浴という言葉を「お風呂に入る」と限定した場合です。
体はちゃんとこまめに洗っているようです。
浴槽にお湯を張って、そこに浸かるという習慣を持つ人が少ないのは確か。思春期以降はシャワーばかりという人が大半でしょう。
調査が語る「フランス人の清潔度」
フランスの世論調査会社 ifop が2020年に行った調査があります。
ずばりタイトルは「フランス人は清潔か?*」。
1)お風呂とシャワーの頻度
1951年・1986年・2020年で人々の衛生観念がどう変わっているのかを調査したものですが、その中で、「お風呂またはシャワーなどで体全体を洗う頻度」という項目では次のような数字が出ています。
男性 | 女性 | |
少なくとも1日一回 | 71% | 81% |
週2回 | 24% | 15% |
週1回 | 5% | 4% |
男性の約3割、女性の約2割は、週2回以下しか洗っていないんですね。
2)手洗いの習慣
同じ調査で、「手洗いの習慣」についても報告があったのですが、なんと全体の3割の人がトイレの後に手を洗っていないそうです。18歳から24歳の年齢層に至っては、男女とも約半数がトイレの後に手を洗わないとか。
調理の前に手を洗わない人が33%。
食事の前に手を洗わない人が51%。
「手洗い」をきちんとするように、保育園や幼稚園の時から教育されている日本人からしたら、フランス人怖すぎます。
3)下着の交換
男性の73%、女性の94%が下着(パンツですね)を毎日替えると回答しています。
男性の約3割がパンツ毎日履き替えないんですね。ビミョウですよね、このへん。
その次の頻度が週2回の交換なんですが、男性で21%。3日とか4日とか同じパンツなんですね。こうなるとビミョウは通り越して不潔。
4)洗濯の頻度
洗濯をするのは週1回という人が72%で最多。共稼ぎがほとんどなので、ちょっと納得。きっと週末は朝からずーーっと洗濯機回しっぱなしなんでしょうね。
「フランス人は清潔か?*」
* 参考: ifop « Les Français(es) sont-ils propres? »
フランスのバスルームの実態
フランスの一般家庭のバスルームってどんな感じなんでしょうか。
さぞやおしゃれな猫足バスタブが鎮座しているのでは?と想像されているかもしれませんね。
でも、いろんなご家庭の浴室を見せて頂いてきましたが、「猫足」のバスタブには残念ながら一度も遭遇していません。ホテルで1度見かけただけですね。
シャワーのみの場合
アパートなどで結構多いパターンが、シャワーのみの浴室です。日本のアパートによくある「ユニットバス」同様にトイレとシャワーが同じ室内にあるものがほとんど。
古い設備のところは、シャワーブースにビニールカーテン。新しい設備だと、イタリア風シャワーと言って、床がフラットなタイプ。
⇧クラシックなタイプのシャワーの例
⇧イタリア風シャワーの例
バスタブがある場合
浴室にバスタブがある場合も多いのですが、ふつう浴室内にはトイレ、洗面台、バスタブが設置されています。「洗い場」はなくて、シャワーはバスタブの中で浴びます。
こういうタイプの浴室で「お風呂に入ろう」と思った場合は、まず浴槽にお湯をためて入浴し、その後シャワーを浴びるというのが一般的。
洗い場がないので、先に体を洗ってから湯船でリラックスしたい場合は、お湯が溜まるまで裸でポツンと待たなくてはいけなかったりします。
日本のお風呂のように家族で交代で同じ湯船に浸かるというのは、ちょっと難しい(不衛生だし)ですね。
小さい子供がいる場合には、お風呂にお湯(35度くらい)をはり、バス用ソープを入れてその中で入浴させます。お湯にはソープが溶け込んでいるので、そこに浸からせて出るときにタオルで体を拭きます。洗い流しません。
謎の物体、ヨーロッパの「ビデ」
トイレの便器の横や、バスタブの横に鎮座する、トイレと同じくらいの高さの妙な形の洗面台。
これが、「ビデ」です。
日本では洗浄器付きトイレが広く普及していて、ボタンひとつで温水が出てきますよね。それと使い道は同様です。温水をためて、局部を洗うらしいです。
もともとお風呂やシャワーで体を洗う頻度が高くなかったため、局部洗浄のために使われていたと聞きます。
ただ、ビデが付いている浴室は少なくなりつつあるようですよ(毎日シャワーを浴びる習慣が一般化してきたからでしょうか)。
ヨーロッパ南部の国々で見かけることが多く、イギリスや北欧では見かけたことがないように思います。
洗濯機はどこに?
日本の浴室では、脱衣室に必ずと言っていいほど見かけるのに、フランスの浴室ではあまり見かけないのが洗濯機。
キッチンや、家事室、ガレージなど家庭によって設置場所は様々です。
週1回まとめて洗濯する家庭が多いので、「お風呂の前に脱いだ服をポイっと洗濯機に入れる」ことはあまりなさそうです。洗濯物は、大きなバスケット(蓋つき)に入れておきます。
フランスの怪しい衛生観念
フランスに暮らしたことのある日本人が、「フランスって、ちょっと不衛生かも」と感じるのはどんな場面なのでしょうか。
ここからは具体的に「フランスの怪しい衛生観念」についてご案内していきましょう。
トイレの後に手を洗わない
さきにご紹介したフランスの世論調査会社 ifop の調査によると、トイレの後に手を洗わないという人が約3割いました。
18歳から24歳の若年層では、もっとすごくて約半数が洗わないらしいです。
これ本当です。
子供は、さらにもっと洗わないそうです(学校のトイレの後)。
実際に、複数のトイレが並んでいて他人の手洗いの様子が観察できる高速道路のサービスエリアで観察すると、本当に手洗いしない人が多いのでびっくりしますよ。
恐怖のスポンジ
フランスに住む日本人女性の間で恐れられているのが、台所のスポンジ。
1つのスポンジで、お皿やグラスを洗い、シンクを洗い、コンロの掃除をし、テーブルを拭き、(もっとひどい場合は)床までぬぐっちゃう。
しかも、スポンジ自体が「これ、何年前から使ってるの?」というくらい汚れで変色してしまっていることも多いです。
日本人の感覚からしたら、不衛生極まりないですよね。バイ菌をそこらじゅうに塗りつけている感じ。
なんでも拭くフキン
スポンジと同じく、フキンも台所では大活躍。
1枚のフキンで、家族みんなが手を拭き、お皿を拭き、洗ったレタスの水分を拭き取り、おまけに口元までぬぐっている…。そんなシーンを見たことがありますよ。
空気が乾燥しているからすぐ乾くとか、そんな問題じゃないのに。
バスマットは洗わない
バスマットもほとんど洗わない家庭が多いようです。
「え?だってシャワーで洗った後の足をふくものだからキレイじゃん?」
(いやいや、シャワー前に汚れた足でそのマットを踏んでいたでしょう。)
雑菌が繁殖するとか、不衛生だとか、あまり気にしないようです。
変わってきたフランスの衛生観念
とはいえ、時代の流れとともにフランスの衛生観念も変わってきているようです。
シャワーやお風呂で体を洗う頻度については、1951年には「毎日洗わない」人が48%だったのに対し、2020年の調査では76%が「少なくとも1日1回」になっています。
また、下着の交換頻度も大幅に変わっています。
「毎日パンツを取り替える女性」は、1951年には17%のみでしたが、2020年には94%になっています。
でもこれはフランスに限ったことではないかもしれないですよね。
日本人は清潔好きとはいえ、内風呂がある家が一般的になったのはそれほど古い話でないので、日本人だってちょっと前までは毎日洗わない人も多かったのではないでしょうか。
フランス人も実は風呂好きかもしれない
ほとんどバスタブに入浴することのないフランス人。
では、お風呂が嫌いなのかというとそうでもないようです。
日本に滞在すると「温泉ファン」になってしまう人も多いんですよ。普段は36度のお湯を「熱い湯船」と言っている彼らなのに、日本の温泉は大丈夫らしい。
駐在員の夫と共に日本に住んだことのあるフランス人女性がこんなことを言っていました。
「日本に住む前は、アルプスのスキーがとっても楽しかったの。でも、今はそうでもない。だって、アルプスにはアフタースキーの温泉がないんだもの!温泉なしではスキーが楽しくない!」
まとめ
「フランス人は滅多に風呂に入らないらしい」という話を聞きます。
確かに、湯船に浸かって「ああいいお湯だ」という人は少ないですが、シャワーを毎日浴びる人もかなり多いよう。
わりとちゃんと洗っているようです。
衛生観念については、いろいろな見方がありますが、フランス人は衛生面に関してはおおむね「おおらかなラテン」的ですね。あまり細かいことにこだわらないんです。
日本人としては、ちょっと受け入れがたい部分もありますが、「郷に入っては郷に従う」でラテン的に考えるのが一番のようですね。