日本に来てラーメンとうどんが大好きになったアメリカ人の同僚。でも熱々が食べられず、いつも少し冷ましてから食べます。
美味しくなくなっちゃうと思うけど、欧米の人って猫舌なの?
そうなんです。欧米の人たちと仕事やプライベートで関わって気づくことの一つが、温度の感覚の違いなんですよね。
冬なのにジャケットの下が半袖だったりするし、ラーメンのスープなんかびっくりするほど熱がるし。
欧米の人は、みんなもしかして猫舌?なんて思っちゃいます。
こんにちは、まのん(@ManonYoshino)です。
もう長いこと欧米の人たちと関わって生きてきて、「温度」にまつわるいろんな考察もしてきました。今回は、食べ物・飲み物に関する日本人と欧米人の感覚の違いについてご紹介させていただきたいと思います。
目次
海外「猫舌」事情
「ひい〜っ熱い、ヤケドさせる気か!」
外国人彼氏と付き合って、こんなことを言われた日本人女性は意外と多いのでは?
麺類のスープ、コーヒー、お茶など、日本人は熱々が大好きですよね。あっつーいのをフーフー言いながら食べたり飲んだりします。それが至福でもあるわけで。
ところが、フーフーいいながら食べなくてはいけないほど熱いものって、欧米にはないような気がします。彼らが猫舌だというのとは少し違うみたいで、実態は次のようなものと思われます。
- フーフー吹きながら、というのはマナーが悪いとみなされる
- あまり熱いものを食べるのは体に悪い
- したがって、猫舌というよりも熱いものを食すこと自体がないので慣れていない
普段の生活の中での、気温の「暑い vs 寒い」の感覚の違い、食べ物・飲み物の温度の「熱い vs ぬるい」の感覚の違い。どうにも分かり合えない、この感覚の差。
ちょっとしたことなんですが、「国際間の分かり合えない感覚」で関係にヒビが入ることだってあるので、実は無視できないことなのです。
必要なかった「猫舌」表現
イギリス出発前に準備した語彙「猫舌」
イギリスの語学学校に通うために渡英する直前のこと。さほど英語の事前勉強をしたわけではないのですが、着いてすぐにホストファミリーに説明の必要な事柄について、心の準備をしました。
その一つが、「猫舌」の説明。
学生時代、学食などで友達とお昼を食べる時、熱い麺類だと筆者はいつもビリ。熱いものが苦手で、すぐに舌を火傷するタイプなので、ゆっくり冷ましながら食べていたんです。
ホストファミリーの家でアツアツ料理を出された時に、「ゆっくりしか食べられないと失礼にあたる!」と真剣に思い、その説明の英文を考えました。
「猫舌」は英語でなんという?
「猫舌」ってなんていうんだろう?と、和英辞典で調べたら、Sensitive Tongue と出ていたんです。で、作ってみた英文が次の通り。
「Sorry, I have to eat very slowly. I have a sensitive tongue.」
うーん、センシティブ・タンってなんか妖しいですよね。今考えれば。。。あっち系っていうか。
「I have to eat slowly, because it is a bit too hot for me.」とか普通に言えばいいんですけどねえ。その当時は日本語で考えた文をそのまま英語に訳さなくちゃ!と考えていました。
で、それから30年。一度たりとも、「猫舌なんで、ゆっくり食べます」と説明しなくてはいけない場面に出くわしたことはありません。。。
そもそも欧米では「アツアツ」を食べる機会がない
「猫舌なんで、すみません」のフレーズを使う必要がなかった理由はたったひとつです。それは、欧米の食事では「アツアツをフーフー言いながら食べる」料理が出てこないからです。
そもそも、先に述べたように食べ物にフーフー息を吹きかけながら冷ますという行為自体、あまり歓迎されたマナーではないようです。
スキー場のレストランで、フーフーしながら、熱いラーメンを食べる至福の瞬間も、熱いお茶をフーフーしながらいただく楽しさも、日本人ならではなのかもしれません。
試しにレストランでスープを注文してみてください。
激アツのスープは出てこないと思いますよ。多分。(例外としては、フレンチオニオンスープ。)
「アツアツ」にすべきか、「ちょいぬる」か
ラーメンのスープ、カルチャーショックを受ける
ふた昔以上前の話です。カナダ、オンタリオ州トロントに初めて「日本式の本格ラーメン店」が開店しました。
トロントにはその当時で2万人の日本人が住んでいると言われていましたから、日本食レストランや食料品店も揃っていて、お金さえあれば不自由なく「日本ライフ」がエンジョイできていました。
難点をいえば、日本風のケーキ屋、パン屋、和菓子屋、ラーメン屋がなかったことでしょうか。
そうこうしているうちに、日本人が日本風のパンやケーキを製造して販売するお店が開店し、われわれ日本人は大喜びで「イチゴショートケーキ」や「あんぱん」を買いに行きました。
さて、次に開店したのがラーメン屋。「カラオケの後は小腹がすいたから、ラーメンでも食べたいよね」という酒飲みの欲求や、日本恋しでラーメン食べたい学生の希望を叶える待ちに待ったラーメン専門店。
まっさきに行ってみた会社のおじさん。
「んーー。なんっか足りないんだよな。なんだろうと思ったら、スープがぬるいんだよ。アツアツだとカナダ人が食べられないから温度を落として出してるらしい。がっかりだなあ。ラーメンのスープはやっぱりアツアツじゃなくちゃな」
なるほど。
喜び勇んで行ってみても、「ぬる湯ラーメン」に懲りて、2度目は行かないという日本人が結構いましたね。その後ずいぶん経ってから行ってみたら、ちゃーんとスープはアツアツ。
カナダ人に合わせてぬるめのスープにしたところ、期待して開店を待っていた日本人からいろいろいわれたらしく(本当のところはわかりません、ウワサです)、きっちりアツアツにしたと聞きました。(パリのラーメン店やうどん屋さんでは熱々が出てきます)
今では複数のラーメン店があるらしいです。
ズズズ〜の意義
日本では、スパゲティなどのパスタ類をのぞいた麺類、「ズズズーっ」と音を立てて食べてもOKですよね。というより、むしろ音を立てて食べているのがふつう。
欧米では、この「ズズズーっ」と音を出す食べ方、マナー違反ですよね。鼻をズッとすするのもとても嫌がられます(おもむろに言わず、「はいティッシュ」と差し出すことも)。
最近、夫がお味噌汁やスープを飲む時に、このズズズをするのが気になって、「おやめなさい」と注意したところ、次のようなことを言いました。
「熱いものを飲む時、こうやって空気を含ませながらすすると、やけどしないよ。日本人がラーメン食べる時とおなじじゃん?」
なるほど、ズズズには意味があったのかもしれませんね。熱いものでも、ズズズッと空気と一緒にすする事で、熱さがやわらいで食べやすくなるということでしょうか。
欧米人は、ズズズをしないから熱ものが苦手。ホントかなあ?
まとめ
食べ物や飲み物の熱さへのこだわり。欧米の人たちと、日本人では感覚が違うことが多いです。海外で、日本で、欧米の人たちとの関わりで見てきた食の体感温度差(許容温度?)についてご紹介しました。
ただ最近は少し変わってきているかもしれません。
現在、広く日本食文化が世界に浸透し、本格的な日本人経営による日本食レストラン、ラーメン店やうどん屋が海外展開しています。
食文化だけでなく、アニメや漫画などが海外で大人気で、日本式に日本を楽しむ人たちも増えているんですね。ラーメン屋の前に長蛇の列を作り、熱々のスープをレンゲを使ってすするパリジャンたちを見ると、熱い食べ物へのリスペクトは確実に高まった?とも感じます。
欧米人との温度にまつわるお話は、次の記事でもご紹介しています!