初めての子育てに奮闘中。
フランスは子育てがしやすい国だと聞いたけれど、どんな様子なのかな?
「子供に優しい国」って本当?
こんにちは、まのん(@ManonYoshino)です。
フランスで子育てをして15年超。
いつのまにかベテラン?になってきました。
子供のバイリンガル教育や、学校行事・習い事などに追われる日々から一歩退いた今、フランス子育て文化についてちょっと振り返ってみたいと思います。
子育てしやすい国、と言われるフランス。
日本で育児をしていないため、日仏比較などおこがましい限り…
ただ、日本の学校には毎年体験入学でお世話になってきましたし、自分自身(が、子供だった頃)の経験もあるので、そこから考えると
確かにフランスは子育てしやすいのでは…?
と感じます。
フランスの子育て事情について疑問をお持ちの方に、
フランスが子育てしやすい国と言われる理由
フランスの子供たちの生活のリアル
フランスは子供に優しい国なのか?
といったトピックで現実のフランスをご紹介します。
目次
フランスが子育てしやすい国と言われる理由
先進国の中で、少子化対策が功を奏したと言われているフランス。
確かに、フランスの幼稚園から高校までをぐるっと見回してみると、3人以上の子供がいる家庭が多いように感じます。
逆に一人っ子はクラスに数名しかいません。
ところが統計を見てみると、女性の出産数は2010年をピークに年々下降(*)しているんですよね。どうやら、少子化は先進国共通の懸念のようです。
(*)Insee(フランス国立統計経済研究所)「Bilan démographique 2023」より
子沢山家族が多い
とはいえ、今現在の子育て世代は子供が2〜4人という家庭が中心。なかには、5人きょうだいや6人きょうだいというケースも。
これは、子供2人以上から税金が軽減されたり、家族手当が支給されたりなど「子供を産んでも支援があるから大丈夫」なサポートがあるからとも言えます。
子育て世代女性の就業率が高い
出産時に出産育児休暇をとっても、その後また職場に戻る女性が多いフランス。保育所に預けるほか、ヌヌーと呼ばれるベビーシッターに預ける人も。
日中の公園には、乳幼児を数人連れたヌヌーさんたちもよくやってきます。
「母親だから子供の世話を一手に引き受けるべき」とか「母親だから子育てを最優先に」といった社会的プレッシャーが少ないんですよね。
また、休暇を取ることに対し罪悪感を全く感じる必要のない社会なので、あまり気負いなく子育てしながら仕事も継続できるのだと思います。
子供が病気の時など「今日は家で仕事します」と言って、在宅に切り替えることもコロナ禍以前からごく当たり前の風景。「勤怠管理」は緩くて、仕事でちゃんと成果を出している限り誰も文句を言いません。
オフィス勤務の場合、取ろうと思えばランチタイムの休憩が2時間取れるフランス。この時間を利用して買い物をしたり、子供を家に連れ帰ってお昼を食べさせるという人もいます。
いろいろと融通が効くんです。
家庭や子育てを犠牲にせずともフルタイムの仕事ができるのは、フランスの社会システムの良いところではないでしょうか。
▼ フランスに行ってみたい、フランスに住んでみたい!一般に語られるフランスのイメージと現実はどう違うのか?日本とは言葉や歴史もまったく違うフランスの、生活者目線での実際の姿をご紹介します。
フランスの子供たちの生活とは?
では、フランスが本当に「子供にやさしい国」なのか、子供たちの生活をのぞいてみましょう。
フランスの子供の学校生活
フランスの学制は、幼稚園3年、小学校5年、中学校4年、高校3年。小学校から高校までの就学年数は、トータルで日本と同じ12年です。
幼稚園、名称はエコール・マターネルといい、「学校」と呼ばれていて、アルファベットの書き方や数字の書き方の学習など、ちゃんと「お勉強」がカリキュラムに入っています。
日本のように、公立と私立の学校が存在し、公立の学校では「宿題は基本なし」。その理由は、親が宿題を見てあげられる家庭とそうでない家庭の子が不平等にならないように、ということだそうです。さすが、自由・平等・博愛の国ですね。
幼稚園・小学校ともに朝は8時40分(公立)から始まり、就業は午後4時20分。校内にある学童保育では、最大18時まで子供たちを預かってもらえます。
水曜日はお休みの学校と、半日だけの学校があります。
フランスの学校のお昼
お昼は、親が迎えにきて家で食べてくる子と、カフェテリアで食べる子がいます。
カフェテリアはある程度好きなものだけ取って食べることができるビュッフェ式。高い昼食代を払いながら、「今日はポテトフライとチーズだけ食べた。あとは美味しくなさそうだったから」なんて言われるとガッカリ。
子供たちの昼食時間のお世話は、教員ではなく保育アシスタントや、生徒指導専門員たちがします。
教員は2時間のお昼休みをとり、その間は外でランチをしようが家に帰ろうが自由。いかにもフランスですよね。
フランスの特徴的な学校の決まり
フランスでは10歳までの登下校は、保護者やそれに準ずる大人の送り迎えが必須。学校の門まで送り届け、帰りは下校の開門時間に合わせてお迎えに行きます。門のところには係員がついていて、子供が勝手に出て行かないよう目を光らせているんですよ。
また、教室には、担任(もしくは教科担当の)の先生の引率なしには入れないことになっています。
朝、登校すると校庭で自由に遊び、始業時間になると先生が集合をかけて教室に連れて行く仕組み。休み時間や昼休みも、教室にいることはできず、これは雨の日や雪の日も同様なのは厳しいところです。
とにかく多いフランスの学校休暇
「フランスの学校は休みが多いらしい」…。これ、本当です。
だいたい2ヶ月に1度2週間の休暇が入り、グランバカンスと呼ばれる夏休みは2ヶ月。
この間、誰が子供を見るの?と疑問に思われることでしょう。
共働きが当たり前のフランスでは、学校休暇中に子供をどうするかに悩む人も多いのです。でも、バカンス命のフランスですから、年間5週間付与される有給休暇をバランスよく割り振って家族旅行をするケースも多いよう。
学校休暇の時期に公園に行くと、「おじいちゃん&おばあちゃん」が大活躍。休みの取れない親に代わって子供を預かる、いつもなら見かけない祖父母世代が子供を連れてやってきます。
また、休暇中の学童保育センターも充実しています。スポーツやアート、クッキングなど子供の興味に合わせてプログラムを選べるうえ、朝から夕方まで子供をしっかりあずかってくれるのでありがたい存在。
自治体・企業など主催の「コロニー」と呼ばれるキャンプや旅行に参加する子も多くいます。これは、週単位で、子供を預かって山や海、イギリスやスペインなどの外国に旅行に連れて行き、さまざまなテーマの活動をするというものです。
▼ フランスの小学校は、日本の小学校とどんなところが違うのでしょうか。日本とは違うフランスの小学校の常識や設備 、そして保護者の学校との関わり合いを観察してみました。
フランスの子供の家庭生活
学校での子供たちの様子をお伝えしたあとに、ここからは家庭生活の様子をお届けします(もちろん、ここにご紹介する様子が全てではありませんが…)。
子供は自室で寝るのが基本
これはたぶん、日本でもよく知られていることだと思いますが、欧米の子供は赤ちゃん時期から親と寝室は別。
「親=大人の世界」と「子=子供の世界」は、ちゃんと区切られています。
我が家では、完全母乳を目指していたので、離乳食が始まるまでは夫婦の部屋の片隅にベルソーと呼ばれる乳児用ベッドを置いていました。授乳が終わって寝るのは、親子別です。それでも、病院から戻った初日から昼間は子供部屋に寝かせるようにしていました。
複合家族が多い国フランス
フランスで子育てをしていると、本当に多いと気づくのが複合家族と日本では呼ばれている「再構成家族(ファミーユ・ルコンポゼ)」。
結婚して、子供が産まれて、離婚し、別の人と結婚や同棲を始めるというパターンはごく普通のこと。共同親権が基本のフランスでは、父親の家と母親の家を週単位で行き来して暮らす子も多いのです。
「先生、宿題やったんですけど、パパの家に忘れてきちゃいました〜。今週ママの家なんで…」みたいな話がよくあります。
異母きょうだい・異父きょうだいが何人もいて…なんていう場合、意外とうまくやっている子も多いようですが、実際は複雑な心境なのかもしれないですよね。
子供たちはいつ夕食を食べる?
ラテン系の人たちは、遅い時間に夕食を食べる人が多いです。フランス人もしかり。午後8時に夕食という家も多いのではないでしょうか。
休暇の時に親戚や友人が集まると、8時から食前酒、夕食は9時過ぎ…ということもよくあります。
これでは子供たちは良い睡眠がとれないため、学校から戻ったらシャワーをして子供たちだけ先に夕食を済ませるというご家庭も。
また、親が夕食にお友達を招待する際も、子供は先に食べさせて8時には寝室に送り込みます。
子供だけでの外出は?
10歳までは学校への送迎が必要なフランス、子供だけでの外出もごく近所を除いてはあまり見かけません。
学校から帰って習い事に行く、という場合も親が送迎しています。
子供たちを遊ばせる場合は、親同士が連絡を取り合って、どちらかの家に連れて行くというのが普通のパターン。
自由、自由と言われるフランス人の暮らしですが、子供に限ってはあまり自由度は高くないようですね。
フランスの子供の習い事
子供に何かしら習い事をさせているご家庭は多いです。
芸術の国なので、音楽やダンス(バレエも)はとても人気ですし、スポーツの習い事をしている子もたくさんいます。
逆に進学塾や補習塾のようなものはほぼ存在せず、学校の学習のみという子がほとんどでしょう(家庭教師をつけている子はいます)。
学校のカリキュラムでは、芸術系の教科があまり充実していないため、楽器を習わせたいなら校外の音楽学校などに行かせるしかないんですよね。日本のように、小学校で全員に音符の読み方や鍵盤楽器を教えるというシステムではありません。
フランスの子供の年中行事
子供たちが楽しみにしている行事といえば、まずクリスマス。これはさすがカソリック国なので、大人もみんな力を入れるイベントです。フランスのクリスマスは基本、家族で祝うもの。日本のお正月のような扱いといったらいいでしょうか。
そして、2月の中旬ごろには子供たちが楽しみにしている「カルナバル」が行われます。キリスト教の謝肉祭で、それぞれ思い思いの仮装をして学校に行き、保護者差し入れのクレープを食べます。
復活祭も子供が楽しみにしている行事の一つ。フランスの復活祭では、彩色した卵ではなく、もっぱら卵や鶏、ウサギの形をしたチョコレートを家の中や庭に隠して子供たちがチョコレート探しをするのです。
はっきり分かれる大人と子供の世界
日本とフランスの子供の生活の大きな違いは、「大人の世界とはっきり分けられている」ということかもしれません。
レストランやパーティーに行くのはお父さんとお母さんで、子供たちはベビーシッターとお留守番というのが普通。
先述のように、家にお客様が来る時も、子供はディナーテーブルに呼ばれません。同じ時間に食事をするとしても、子供は「子供テーブルへ」と言われてしまうことも。
フランスの子供と親の距離感は?
大人との距離がはっきりとられているフランスの子供の生活ですが、親子の距離感は決して離れていないように思います。
夏や冬の長期休暇には家族で旅行する家も多く、親子は密着した時間を過ごすわけです。
大人へのリスペクトやマナーなど厳しく躾けられている子たちは、思春期だからといってあからさまな親への反抗をすることは少ないよう。微妙な距離感があるから、親に対して遠慮ない反抗的な態度をとらないのかなと感じます。
フランスは子供に優しい国なのか?
では、フランスは子供に優しい国なのでしょうか?
結論を言ってしまうと、「そうとは限らない」ということになるでしょう。親や社会の大人に対する子供たちの甘えを許さない社会だからです。
学校で先生に対して反抗的な態度を取ったりすると、徹底的に罰せられたりしますよ。
「君たちに、そんな失礼な態度を取る権利はない!」ということですね。
大人の生活に合わせた子供の生活
フランスの子供の生活は、どちらかというと「大人の生活に合わせることを要求」されます。
学校の拘束時間は、働く両親の仕事の妨げにならないようになっています。子供を送ってから仕事に行き、仕事を終えてから迎えに行くという一般的な大人のスケジュールに合わせた時間です。
先にご紹介したように、学校の職員も分業制がはっきりしており、先生は担当教科を教えることだけに集中できるような仕組みが作られているんですね。年に1〜2度、夕方に行われる保護者会以外に残業している先生など1人もいません。
そして、大人たちの離婚再婚(同棲)もごく普通のことで、子供たちは自分の親権を持つ親に従うようになっています。
本当に、大人の生活に子供が合わせている、という構図ですよね。
▼ 「とにかく休みが長い」と言われるフランス人。なぜフランス人は長く休めるのか、休みに一体何をするのか、フランス人のバカンスについてご紹介します。
子供はどう感じているのか
では、フランスの大人中心社会、子供はどう感じているのでしょうか。
意外と不満に思っている様子はなく、逆に大人になって自由に振る舞えるのを楽しみにしているよう。
筆者が観察したところでは、みんな意外と「大人」です。親たちの決めたことにギャーギャー反発したりしていないようなんですね。
義妹があるとき言っていました。
「子供たちには、退屈でたまらないけれど我慢しないといけない、という経験を積ませることが重要なのよ」
大人たちが集まって延々とパーティーをするなかで、子供たちはベビーシッターと静かにしていなくてはいけない…というのも「我慢に慣れる」訓練なのかもしれません。
そして繰り返しますが、フランスの子供たちの生活には「意外と自由はない」ということです。
▼ フランスでの子育ての様子を、漫画で読んでみませんか?
フランス在住の漫画家かわかみじゅんこ氏のパリ生活&子育て漫画には、フランスの子どものいる家庭の日常生活が描かれています。フランス生まれのお子さんの幼稚園入園の様子が描かれている第4巻からは、本当にフランスの「子供あるある」で興味深いですよ!
まとめ
子育てがしやすい国フランスは「子供優先社会」でもあると思われがちです。
ところが実際に子育てをしていくと、大人社会がスムーズに回るようなシステムになっていると気づくように。
大人が自分達の生活を楽しめるような社会になっているんですね。
フランスの子供たちがのびのびとしているように感じるのは、きっと大人の側に気持ちの余裕が生まれる社会システムが存在しているからかもしれません。