フランスの小学校に子どもが入学予定。
初めてのことなので、様子がつかめず親子で不安。
日本の小学校とはどんなところが違うの?
こんにちは、まのん(@ManonYoshino)です。
海外生活のなかで、戸惑うことって多いですよね。
自分自身のことでも、あれこれ悩んだりするものです。
子どもの学校教育のことでも、「わからない」「びっくり」がたくさんあります。
現地の学校システムって、日本で教育を受けた親世代(自分)にはわからないことだらけ。
この記事では、
フランスの小学校の「日本とは違う点」
にフォーカスしてみたいと思います。
これからフランス駐在!とか、これから子どもが学齢期というご家庭の参考なりましたらと思います。
フランスの小学校は日本とはかなり違う
当たり前ですが、フランスの小学校の教育スタイルや設備は、日本とはかなり違います。
日本と比べてどこが違う?
管理人自身は、もちろん日本の小学校出身。
子どもがフランス現地校で教育を受けていて、毎年、日本の小学校に体験入学させてもらってきました。
二つの国の小学校、ざっくり見てもかなり違います。
学校で通じる常識が違う
カリキュラムの中で勉強するものが違う
学校の設備が違う
保護者の学校との関わりが違う
どちらが優れているとか、そういう話ではありません。
見たところ、どちらのシステムも一長一短。
良いところと、そうでないところがあると感じます。
学制はどう違う?
フランスの学制は日本と少し違い、小学校が5年、中学校が4年間の教育になります。
日本の幼稚園に当てはまるのが、エコールマターネルです。
日本では、「園」と呼び、あくまでも学校ではないよという位置付けですよね。
でも、フランスでは、「エコール(学校)」です。
日本語訳は幼稚園ですが、親子共々「学校に入学するんだ〜!」という気持ちで新学期を迎えるのではないでしょうか。
多くの子どもは、3歳になる年の9月から年少クラスに入り、3年間通います。
そのあと、6歳になる年の9月からは小学校です。
特に入学式のような儀式はなく、新学期初日に親と一緒に学用品一式を持って学校に集合。
担任の先生が、自分のクラスに入る子どもの名前を呼び、全員集まったら教室へ移動します。
それで新学期(新入学も)は、静か〜に、何も特別な感動もなく、普通に開始。
日本のようなエモーショナルな場面は皆無かもしれません。
小学校は、5年間。その後、中学校が4年間、高校が3年間になります。
フランスの小学校ならではの常識
フランスと日本の小学校の違い、「学校の常識」についてご紹介します。
節目の式典や行事がない
フランスで子育てをしていて、ものすごく物足りないことの代表格が学校の式典のなさ。
入学式、卒業式いっさいなし。
もちろん、終業式とか、運動会とかもありません。
学校で子どもたちが活躍する姿を見るチャンスが本当にないんです。
日本の学校行事は、保護者も大変なんですが、全くないのも寂しいものです。
「仰げば尊し」の合唱のなか、成長した我が子を見て涙してみたかったですね。
教科書は使い回す
フランスの小学校、多くの教科書は「再利用」です。
教科によっては学校が一括購入して、子どもたちに配布し、後日集金(銀行引き落とし金額に加算)だったりもしますが、ほとんどは古い教科書を使います。
年度始めに、子どもたちがごっそりと古本教科書を自宅に持ち帰り。
保護者が、全ての教科書にビニール製のカバーを貼り付けて、その上から名前を書きます。
(あの、図書館の本に付けられているカバーと同じ)
これは、毎年かなり大変な作業。
指紋が消える〜、とか思います(大げさですが)。
しかも、事前に教科書カバー用の接着ビニールシートをまとめ買いしておく必要があるんです。
出遅れると、スーパーなどで品切れになって買えないことも…。
日本国籍の子供には日本政府から教科書の無償配布がある!
ありがたいことに海外に住んでいても、日本の国籍を持つ子供には外務省を通じて教科書が配布されます。
毎年、この無償配布をいただくたびに、日本に向かって最敬礼したくなります。
全部揃うと、めちゃくちゃ重いんですよ。
そして、日本の情報の宝庫ですよ。
算数国語から、家庭科や地図帳まで全部です。
これらを世界中に配ってくれる日本政府ってすごいと思いませんか?
新学期初日に文房具を揃えて持っていく
夏休みが2ヶ月あるフランス。
休みに入ると、学校のホームページなどに各学年ごとの学用品リストが掲載されます。
それを元に、夏休み中に全てを揃えておくんですね。
(最近は、一括購入サイトで全品揃えて送ってくれるサービスもあり)
揃えた学用品は、新学期の初日に持って登校します。
ものすごい荷物です。
クラスの共同備品を持ち寄る
9月の新学期の持ち物リストには、次のような品目もあります。
- キッチンペーパー
- 箱型ティッシュ
- ウェットティッシュ
これらは、教室に備品としておいておき、子どもたちが使います。
1年間で消費するようですね。
幼稚園・小学校の新学期学用品には「名前をキチンと書いておくように」との指示がありますが、消耗部品には書かないという暗黙の了解があるんですよ。
知らずに、全部に名前を書いてしまったお母さんがいて、恥ずかしかったという笑い話も…。
休み時間は教室立ち入り禁止
フランスの小学校、休み時間は基本立ち入り禁止です。
鍵を閉めてしまう先生もいるくらい。
子どもたちは全員、校庭に出ていないといけないんです。
雨の日も、雪の日も、です。
(さすがに大雨の日などは、体育館に避難させてもらえたそう)
なので、真冬には厚手のダウンジャケット、帽子、手袋は必須アイテム。
雪の日には、スノーブーツを履き、教室用に別の靴を持たせることも。
逆に、6月など猛暑日になることもあるので、熱中症が心配だったりもします。
ほとんどの学校にエアコンはないと思われます。
登校したら校庭で待つ
集団登校や、子どもだけでの登校は「基本NG」なフランス。
学校まで送ってきた親が立ち入っていいのは、校門まで。
校内に入った子どもは、校庭で遊びながら開始時間まで待つことになります。
授業開始時間の直前に各クラスの担任の先生が出てきて、子どもたちを教室に連れて行って1日が始まるんです。
集団登校したら、昇降口で上履きに履き替えて、教室に向かう…というのが日本のスタイルですが、フランスとはだいぶ違いますよね。
昼休みはなんと2時間!
日本の小学校、昼休みも結構忙しいですよね。
給食は自分たちで配膳して、みんなで教室で食べますが、全体の時間が短いです。
フランスの昼休みは、2時間あります。
それは、たぶん家に帰って昼食をとる家庭がけっこうあるからかもしれないですね。
地方では、会社員などもお昼は自宅に戻って食べる人がわりといるんですよ。
11時半、校門が開いて「自宅で食べる子」が親と一緒に家に帰ります。
2時間あるので、家に帰って食べても十分間に合うんですね。
昼食は食堂で食べる
もちろん、朝から終業まで学校にいる子も多いです。
学年が高くなるほど、学校で昼食をとる子どもが増えていきます。
昼食時も教室は立ち入り禁止になるので、昼食は食堂で。
ちゃんと、前菜・メイン・デザートとコース仕立てですよ(笑)。
小学校までは、児童お世話係が「野菜も食べなさい、残しちゃダメです」などの指導をしてくれるようです。
高学年からは、セルフサービス状態で好きなものを選べるそうで、「嫌いなものは絶対食べない」子もいます。
日本の給食費と比較すると、フランスの学食代は倍以上の価格。
でも「フランスのキャンティーン(学食)、めっちゃマズイ」そう。
しょっちゅう休暇がある
ちょっとこれみてください。
<フランスの学校休暇>
<休暇カレンダー(例)>
すごいですよね、「休みの合間に授業がある」と言ってもいいくらい。
だいたい6〜7週間ごとに2週間ずつ休みがある、という感じでしょうか。
気分的には、
「あ、もう少し頑張れば休みだ〜!」
ということでラクではあります。
でも、子どもが小さい間はその2週間の「子どもの世話をどうするか」が大人の悩みでもあります。
休暇中は学童クラブのようなところに行ったり、祖父母宅に預けられたりする子が多いですね。
バカンスは休んで遊ぶもの
1年中休暇のことばかり考えているフランス人。
遊ぶことが大好きなんですね。
学校も休み中の宿題はほぼ出ないよう(全ての学校がどうなのかは不明です)。
日本の小学校のように、夏休みのドリルだとか、さまざまな宿題だとかは出ないですね。
休暇は休んで遊ぶものという(当たり前の)常識が徹底されています。
先生は教えることに特化する
日本の小学校の先生は、本当に忙しいと思います。
朝の登校時の見回り、生活指導、給食指導、清掃指導まで。
下校時にも見回りをしてくださって、会議や教室での残務を処理していますよね。
朝7時から暗くなるまで、長時間労働が普通のよう…。
それにくらべてフランスの小学校の先生は優雅です。
教えることだけに特化していますね。
朝は授業開始の直前に校庭で待つ子どもたちを集合させて教室へ。
休み時間は、先生も教室を閉めて休憩。
お昼は2時間しっかり休み。
同僚の先生と近くのカフェでランチするもよし、学食の「先生エリア」で食事をするもよし、家に戻ってもOK。
午後の授業が終わると同時に帰宅。
小学校の教師になるなら、フランスのほうが絶対人生楽しめそうです。
飛び級が珍しくない
飛び級、日本では滅多にないですよね。
フランスでは、クラスに1人や2人は飛び級をしてきた子がいます。
幼稚園の年長の子で、すでに本がスラスラ読めるなら小学校に飛び級するというケースが多いらしいです。
なかには成績がずば抜けて優秀なので、小学校最終学年から中学2年に飛び級という子も。
飛んでしまった学年の学習内容は大丈夫なのか?と余計な心配をしてしまいますよね。
清掃の時間はない
たぶん、これは「ないんじゃない?」と予想される方が多いかもしれませんよね。
清掃の時間。
ありません。
校内のすべての清掃は、専門業者が入って行われています。
毎日ではないようです。
教室内の整頓は、そのクラスの担任の先生が授業の前後に行なっているようですよ。
児童会や委員会、必須クラブ がない
最近の日本の小学校では、児童会や児童会長選挙というものがない傾向のようですよね。
代わりに「運営委員会」なるものが、かつての児童会の役割をする学校もあります。
今も変わらず存在するのは、各種委員会と必須クラブ。
放送委員会とか、興味を持つ子どもが多いですよね。
それら一切が、フランスの小学校にはないんですよ。
学校の運営は、学校が担当。
清掃や校庭の整備は業者が担当。
クラスの中での「係」はあるようです。
また、学校によっては昼休みや放課後に課外スポーツ教室があります。
外部のインストラクターが来て、バスケットボールやアーチェリーなどの指導をしてくれます。
日本の小学校にあってフランスにはない設備
学校や地域によっても違いはあるかもしれませんが、日本の小学校には「あたりまえにある設備・施設」で、フランスの小学校では「ないのが当たり前」なものがあります。
特別教室(カリキュラムが日本と違う!)
日本の小学校って、たいていの学校に「ある教科に特化した教室」ってありますよね。
日本の小学校にある特別教室
理科室
調理室
音楽室
図工室
これらの特別教室、フランスの小学校にはないのが普通なんです。
なぜか?
答えは単純で、それらに特化した授業がほとんどないから、です。
フランスの小学校のカリキュラムって、国語と算数(そして英語)に非常に大きなウェイトがおかれているようです。
もちろん、図画工作もあるし、歌を歌う時間もあります。
でも教室で行える範囲のものです。
理科の実験などは、ほとんど登場しませんし、家庭科の授業もありません。
高学年になって、歴史や地理の授業がちょっと入るくらいです。
職員室ってどこ?
日本の小学校って、職員・来客玄関から入ってすぐの場所に、どーんと大きく職員室がありますよね。
先生全員が一堂に会し、仕事をし談笑し、お茶も飲み、時には生徒が質問にやってくる職員室。
あの、職員室的な大部屋がフランスにはない!
先生が業務連絡や作業に使う部屋はあるけれど、教職員全員にそれぞれデスクがあるという風景はないかもしれません。
体育施設
学校によっては体育館がありますが、小学校低学年では体育らしい体育の時間がないんですね。
日本の小学校のように、校庭に鉄棒や遊具が設置されていたりする光景はあまりないかもしれません(幼稚園なら若干の遊具あり)。
また、校内にプールがある学校もほとんどないかもしれません。
みんなでちょっとかけっこしましょう、みたいな軽い感じです。
運動は、習い事として各家庭の責任で行うもの。
子どもたちの多くは、サッカー、テニス、バスケットボール、体操など、放課後や週末に専門の教室に通っていますね。
水泳だけは、一定の期間に限って公営のプールにて授業があります。
衛生・保健設備
日本の小学校なら当たり前に存在する、次のような設備がフランスにはありません。
フランスの小学校では見かけない設備
複数名が同時に手洗いできる大きな手洗い場
水飲み場
保健室
怪我や病気の場合は、まず担任の先生が対応してくれるようです。
絆創膏をはったり、教室の隅の折りたたみベッドで休ませたり。
それで間に合わない場合は、親に迎えにくるよう連絡が入ります。
また、トイレの数が極端に少ないのもフランスの学校の特徴かもしれません。
1フロアにトイレ1箇所(1室)というケースも(子ども100名とかで1トイレ)!
放送室
校内放送って、日本の学校を思い出します。
「みなさんこんにちは、お昼の校内放送の時間です♪」
「これから朝礼を行います。校庭に集合してください」
などなど、イベントと放送室は切っても切れない間柄でしたよね。
これ、フランスにはなさそうです。
少なくとも、聞いた範囲では放送室の存在する学校はありませんでした。
体験入学で日本の小学校に通うと、子どもたちは校内放送の存在にびっくりするようです。
▼ フランスでの子育ての様子を、漫画で読んでみませんか?
フランス在住の漫画家かわかみじゅんこ氏のパリ生活&子育て漫画には、フランスの子どものいる家庭の日常生活が描かれています。第7巻から、小学校に入学されたお子さんの日常が描かれていて面白い! おすすめです。
フランスの小学校、保護者はどれくらい関わるの?
個人主義が徹底しているといわれるフランス、保護者が学校に関わることはあまりないのではと思われるかもしれませんね。
でも、ゼロというわけでもありません。
フランスでは保護者が子どもの送迎を行う
ランドセルを背負った子どもたちだけで学校に登校する日本。
いっぽうフランスでは、小学生でも保護者の送迎が必須なんです。
登校時は学校の門まで送り届け、下校時間には門の前で子どもを待つ保護者たち。
下校時の校門には、学校のスタッフが立ち、子どもだけで出ていかないよう見守ります。
登下校時の学校付近の渋滞や、駐車スペースの確保は毎日の頭痛の種だったりするんですよ。
学校のご近所から違法駐車のクレームが出る、なんてことも日常茶飯事のようですね。
高学年になると、事前に許可証をもらった子どもは一人で下校することが認められます。
それでも、保護者や代理人(要事前登録)が送迎するケースが多いです。
登下校の送迎、毎日時間をかなり取られるので、わりと大変ですよ。
フランスには授業参観がない
保護者としてはちょっとがっかりするのが、これ。
授業参観がないんです。
市内中心部にある学校は高い壁に囲まれていることが多く、子ども達が塀の中でどんな風に過ごしているのか、様子がわからないんです。
( 鉄さくで囲われている郊外の学校などは、校庭で遊ぶ子どもたちの姿を見ることも可能)
ただ、先生や子どもたちの集団での様子を、間近に見る機会が全くないわけではありません。
それが年に数回ある校外授業。
博物館や美術館を訪れたり、オペラやコンサートに行ったりする文化活動。
終日バスなどで出かける遠足。
2ヶ月ほど毎週出かけるプール。
これらの校外授業には、必ず保護者ボランティアの募集があります。
低学年では、各クラス数名の保護者が「手伝い」として参加するんですね。
子どもたちの普段の様子や、先生の人柄を知る絶好の機会です。
フランスでは家庭訪問がない
先生は教科を教えることが仕事ですし、各子どもたちの家庭の様子まで知る必要はない前提があります。
なので、フランスでは家庭訪問などというものはありません。
(他の国ではあるんでしょうか?)
日本の家庭訪問の目的って、通学路や通学環境の確認が第一らしいですよ。
危険なところはないか、先生の目で確認し、さらに保護者との顔合わせで面識を持つために行われているようです。
フランスの場合は、幼稚園も小学校も保護者の送迎が前提。
先生が子どもひとりひとりの通学路を確認する必要もないし、まず先生の職掌範囲にはないかと…。
代わりに年度始めには、必ずクラスごとの保護者会が行われます。
担任の先生や、英語担当の先生などから1年間のカリキュラムの説明が行われます。
また、その場でその年のクラス保護者代表が(事前にPTA組織から打診があったり、立候補を募って決めておく)連絡網作成のためのメールアドレスを聞いたりします。
かといってその後、マメに連絡があるわけでもなく1年が終わるんですが…。
フランスでは個人面談がない
学校側から設定される個人面談、とくにないですね。
ただ、先生は保護者との関わりをシャットアウトしているわけではなく、むしろ面談の申し込みは大歓迎といった雰囲気です。
ランチタイムや、放課後など、事前に面談予約をとると親切に対応してくれます。
年度始めにお会いしても、かなり細かく子どもの様子を見てくれているようで、「なるほどプロ」と毎回感心しました。
子どもの習熟度などに問題がある場合は、もちろん学校側から面談の要請が入ります。
全体的にはどうか?
おそらく、日本の学校よりも保護者が学校運営のサポートという面で駆り出されることは少ないかと思います。
運動会などもないので、PTAの係分担もほぼなし。
クリスマスリースの製作販売係、謝肉祭(カーニバル)にクレープを焼いて配る係、学年末のお祭りの模擬店係などありますが、これも完全な希望者ベース。
「やらなくては」といったプレッシャーはまったくありません。
負担が大きいのは、やはり送迎ですね。
まとめ
フランスの暮らしに関しては、出版されている書籍も多いし、日本でも様々な情報が得られますよね。
でも、意外とピンポイントの情報が少ないのが「学校の内情」。
日本の小学校とは、かなり様子が違うフランスの小学校。
地球のほぼ反対側のフランス。
自己主張を美徳とするお国柄ですよね。
言葉も違えば、宗教も違うし、文化そのものが日本とは大きく違います。
どちらの国の小学校にも「なるほど、すごい」という優れた点があるなと感じます。
行事が少なくて寂しい部分もあるフランスの小学校ですが、スパッと合理的な部分も多く面白いなと思います。