フランス人って長い休みを取るって本当?
それってみんなが長期休暇が取れちゃうってこと?
なぜそんなに休めるの?働かなくて大丈夫なの?
こんにちは、まのん(@ManonYoshino)です。
「とにかく休みが長い」と言われるフランス人。
彼らにとってバカンスは人生の最重要案件と言っても過言ではありません。
フランス人は老いも若きも、本当にバカンス大好き。
働く現役世代だけでなく、引退した高齢者世代も、きっちりと日常生活と休暇を分けて暮らしているようです。
フランスでは、まず学校休暇が多く、大人も年間5週間はしっかりと休暇をとります。
日本人にとっては不思議でならないのが、
「みんなが長期休暇をとってよく社会が成り立つな」
ということと、
「よくそんな長い休暇をとってお金が持つな」
ということ。
みんながしっかり休めるフランス社会。
どんな仕組みになっているのでしょうか。
この記事では、フランス人の休暇について
なぜそんなに長く休めるのか
長い休暇にいったい何をするのか
典型的な長期休暇と学校休暇
休暇が長いために起こりがちな問題
のポイントでご案内していきます。
フランス人の優雅なバカンスについて知りたい!というかた、ぜひごらんください。
▼ 「フランス人とは本当はどんな人たち?」と疑問に思う方は、こちらの記事もどうぞ!
フランス人はなぜ長く休めるのか?
日本で働いていた頃、毎年付与される有給休暇を消化し切れたことがありませんでした。
一定日数を翌年に繰り越せるので、常に年次有給休暇が40日もある状態に。
土日を入れたら2ヶ月分ですよね。
海外旅行が趣味だったので、それなりに有給休暇を使っていたはずでも、仕事があるのでせいぜい合計20日の休暇が限度でした。
一方、ヨーロッパの人と仕事をすると、夏は何週間も仕事が止まってしまう!
誰もが連続して休暇を取るんですよね。
フランス人も長い休暇で有名です。
なぜ同じ「先進7カ国」なのに、フランス人は長期休暇が取れて日本人はなかなか休めないのでしょうか。
休むことは国民の当然の権利
「働いたら休む」ことは当然の権利。
フランス人の場合は、「定期的に日常生活を休む」ことがとても重要なことと捉えているように思います。
有給休暇が与えられる会社員なら、とにかく「自分の休暇の権利をしっかり使う」ことを重要視しますよね。
みんなに悪いから
迷惑をかけるから
休むと評価が下がりそう
なんてことは全然考えません。
全国民にとって「バカンス」は生きる上で必要不可欠な要素であって、「バカンスだから!」の言葉で周りも納得するし自分も太っ腹になれるみたいですよ。
まとまった休暇をとるのが当たり前
日本で会社員をしていると、休暇を取るのに「なんとなく申し訳ない…」雰囲気になりがち。
子どもが熱を出したから有給休暇、子どもの学校行事で有給休暇、さらには、役所に行かなくてはいけないから半休。
周りに遠慮しながら連休に1日だけ有給休暇をプラスして国内旅行。なんか申し訳ないからみんなにお土産買っていかないと…
これが、日本の会社員の休暇の取り方ですよね。
フランスはもっとおおらかです。
子供が熱を出したら、自宅でテレワークだし、平日昼間に学校行事なんて行われません。
休暇はちゃんと休むために使うんです。
日常の暮らしを離れてリフレッシュするための休暇なので週単位で休むのが一般的。
夏に3週間〜1ヶ月、クリスマス時期に1〜2週間という人が多いかと思います。
社会全体が「休暇」を尊重する文化
みんながちゃんと「日常を離れてリフレッシュする休暇」が取れるよう、フランスでは社会全体が「休暇」を尊重するようにできています。
個人商店やレストランなどが、「1ヶ月年次休暇中です」という張り紙をしてお店を閉めていても誰も文句を言いません。
馴染みのパン屋やバーの長期休暇も、
「来週からまた再開するな、楽しみ〜♪」
と逆にバカンス開けを楽しみに待つくらいです。
長期休暇を取るのは会社員に限ったことではありません。
個人商店も、農業従事者も、医療従事者も、悠々自適な高齢者もみんな休暇を楽しむわけです。
医師の多くも長期休暇をしっかり取るので、「かかりつけ医の先生が1ヶ月休み」ということも(もちろん代診の先生が診察してくれます)。
「夏は主治医がいない」
ことが多いので、その時期を避けようする人が多いため6月と9月は総合診療医が混む季節でもあります。
長期休暇を楽しめる環境ができている
老若男女みんなが長期休暇を当たり前に取るフランス。
そのための環境がちゃんとできています。
例えば、総合診療医は休暇中、代診の医師を手配し、自分の患者が困らないようにしてくれています。
また、毎日の食事にとても大切なパンを売るパン屋も同様。
長期でお店を閉める場合は、地域内のパン屋が休暇時期をずらしているようで、必ず営業しているパン屋が見つかります。
さらには、年に何度もある学校休暇も、全国を3つのグループに分けて、1週間ずつずらして実施されるんです。
これによって、リゾート地や観光地で働く人たちも、自分達の休み期間が確保できる、というわけ。
さらに、全国各地に休暇用貸アパートやバンガローがあり、家族や仲間と安価に休暇を楽しむことが可能になっています。
▼ フランス人はなぜ長期で休めるのか?休暇のための費用はどうしているのか?気になる方はこちらもどうぞ!
フランス人は長い休暇に何をするのか?
「あまり長い休みをとってもすることがない」
「長期休暇といっても、長期で旅行に出たらお金がかかるし」
会社員時代によく同僚たちから聞いた言葉です。
ところが、フランスでは大富豪だけでなく、ごく普通の一般庶民も長い休みをとって非日常の時間を楽しみます。
彼らは休暇に何をしているのでしょうか。
そして長い休みを遊ぶための費用はどうやって捻出しているのでしょうか。
フランス人の休暇は贅沢ではない
「フランス人は、毎年誰でも長い休暇をとる」というと、お金に余裕があっていいなとか、贅沢だなという印象を持つかもしれませんね。
でも、フランス人は休暇に「お金をたくさん使う贅沢」はしないんです。
休暇は「贅沢にお金を使う旅行とは違う」んです。
時間を自分や家族のためだけに使う、「贅沢な時間使い」をするのがフランス人の休暇。
必ずしもお金をかけて何かをしたり、どこかに行ったりするわけではないんです。
仕事から離れて別のことをする
フランス人の長い休暇、必ずしもどこかに旅行をするわけではありません。
日常のルーティンから離れて別のことをするのも休暇の使い方。普段はできない趣味や作業に没頭する人も多いです。
プロムナード(promenade)と呼ぶ街歩きや野山の散歩や、ランドネ(randonnee)と呼ぶハイキングやトレッキング。フランス人の大好きな娯楽の一つです。
バカンス時期のアルプス地方やピレネー地方など、この山歩きファンで混雑するんですよ。
さらに、気候の温暖な時期には日曜大工や家の改修に精を出す人も多いですね。
セカンドハウスで過ごす
「しっかり休暇をとる」のが当たり前のフランスでは、セカンドハウスを持つ人も少なくありません。
でも、日本でいう「別荘」とは少し感覚が違うよう。セカンドハウスを持つことは、決して特別な贅沢ではないんです。
親が持っていた田舎の古い家を修理しながら、休暇のためのセカンドハウスとして使うケースも。
古い建物を改修しながら使い続けるフランスなので、不動産の価値は築年数が経っても日本のように下がっていかないんですよね。
なので、毎年の長期休暇を楽しむセカンドハウスを買うことをさほどの贅沢とは捉えないようです。
低コスト旅行&滞在を楽しむ
有給休暇をとって旅行、というとホテルや旅館でリラックスする旅を連想しがちな私たち日本人。
フランスの長期休暇での旅行は「低コスト」が基本です。
キャンピングカー(買うのは高いですが!)で、旅をする人
キャンプ場でテントやバンガロー生活を楽しむ家族
ポイントは、車で移動して、自炊すること。
家族や親戚、友人との時間を満喫する
実家や兄弟姉妹の家や、親戚の家に滞在するというケースも多いです。
友達の実家や別荘に滞在させてもらう場合も。
この場合、二つのパターンがあります。
一つは、親戚や友人たちとの時間を楽しむための滞在。
もう一つは、休暇で留守にしている家を貸してもらう滞在。
田舎の大きな家など、部屋数も多いし、トイレやバスルームが複数あることも少なくないので、お互いにストレスなく過ごせるんですよね。
リゾート地を楽しむ
ではフランス人の休暇は、いつも田舎や実家やテントなのか…?というと、そうでもありません。
有名リゾート地もバカンス時期はかなり混み合います。
夏は海水浴やマリンスポーツを楽しむための人で、海辺のリゾートは大混雑。
アルプスも山歩きや登山客で大賑わい。ヨーロッパ最高峰モンブランの麓シャモニーの村などは、駐車場も見つけるのも一苦労。
冬のバカンス時期は、なんといっても山。
スキーやスノーボード、冬山とレッキングを楽しむ人で、大混雑となります。この場合、お目当てのリゾート地に別荘を持っていない人は長期滞在用アパートをレンタル。
ホテルとは違って自炊設備があったり、子ども向けに2段ベッドが設置されていたりで、比較的低コストで滞在できるのがメリットです。
▼ バカンス好きフランス人、「普通の人々」はいったい何をして長い休みを過ごすのでしょうか。
休暇の費用はどれくらいかかるの?
これはどんな形で休暇を過ごすのかによって大きく違ってきます。
ハイシーズンに設備の整ったホテル仕様のアパートを借りたとしますよね。すると、宿泊費用は1泊あたり日本円で最低でも2万円くらいになるでしょう。
スキーリゾートは、板などをレンタルせずに全部自前だったとしても、毎日のリフト券が結構なお値段なんですよね。
単純に宿泊費とリフト券だけで、ざっくり計算して日本円で30万円は超えます。
宿泊費 | 一泊20,000円 | 7泊8日 | 140,000円 |
リフト券6日分 | 大人50,000円 子ども42,000円 | x 2 x 2 | 100,000円 84,000円 |
宿泊費・リフト券合計 | 324,000円 |
光熱費分と謝礼をいくらか払うとしても、この休暇旅にかかる費用は往復の交通費くらいになり、とてもお手頃。
いずれの場合も、食費は当然かかりますが、これは休暇でなくても必ず使うお金なので旅行費とはいえませんよね。
出費の多いパターンと、少ないパターンを2つご紹介しました。
でもなかには、休暇というと家族で海外旅行というリッチなケースも当然ありますね。
フランスでは学校の休暇も頻繁にある
フランスで子育てしていて、日本との違いを大きく感じる点の一つが「休みが多い」ことです。
学校休暇が本当に頻繁にあるんですよ!
長期休暇が何度もある
一つの休暇がやっと終わった…と、安心する間もなくすぐに次の休暇がやってくるというイメージです。
フランスの学校休暇 | |
グランバカンス(夏休み) | 7月初旬〜8月末 |
トゥーサン(諸聖人の日)休暇 | 10月下旬〜11月上旬(2週間) |
ノエル(クリスマス)休暇 | 12月下旬〜1月初め(2週間) |
イヴェール(冬)休暇 | 2月中旬〜3月上旬(2週間、ゾーン毎) |
プランタン(春)休暇 | 3月〜4月のイースター前後(2週間、ゾーン毎) |
年間ざっと計算して16週間のお休みです。
中高生は、6月中旬からお休みになることが多いので、もっと休みが長く…。
学校休暇の間隔は短いと6〜7週間。「休みの合間にささっと学校に行っている」、みたいな感覚になります。
グランバカンスは本当に長い
グランバカンス(大休暇)と呼ばれる夏休みは、本当に長いです。
中学最終学年には中学卒業認定試験、高校2年と3年には大学入学資格試験があるため、試験会場となる学校はその期間お休み。
そのため、実質6月中旬から8月末まで夏休みになってしまうわけですよ。
とにかく長いです。
休暇は「休むため」にある
きっとご想像がつくと思いますが、
もちろん宿題や登校日などは一切ない✨
のがフランスの学校休暇です(とはいえ、一部の学校では、やはり「休み明けまでにレポート書いておけ」などの重い宿題がでることも…)。
休暇は休むためにあるので当然といえば当然。
家族で出かけたり遊ぶ家が多いので、「毎日、絵日記を書く」とか「早朝のラジオ体操」などの課題がもしだされたら、大ブーイングになりそうです。
休暇中は、もちろん習い事などの校外活動も休みです!
フランス人の典型的長期休暇
子どもたちの学校休暇についてご紹介したところで、次は一般の長期休暇がどんな時期にとられるのかについてお話ししましょう。
年2回はまとめて休む人が多い
週単位でまとめてお休みになる商店や飲食店が多いわけですが、だいたい年に2回の頻度でお休みしているようです。
繁忙期を避けてお休みするケースも見かけますが、だいたいどこでも夏は
「Congé Annuel(年次休暇)」
の張り紙をして2週間くらい休んでいます。
これは家族を持つ従業員のためでもあるでしょう。
子どもに合わせて大人も休む休暇
「学校休暇の間の子どもは誰がみているの?」
と疑問に思いますよね。子どもの休暇に全部付き合っていたら仕事に行けませんものね。
在宅で専業主婦(主夫)というご家庭はかなり少ないフランス。
これは、みなさん知恵をひねり、いろいろな援助を受けつつ凌いでいるようです。
夫婦交代で1週間ずつお休みする、という家庭もあります。
もしくは、学童クラブのようなところに預けたり、子ども合宿に送り込んだり。
さらには、学校休暇時期の公園に行くと「おじいちゃん・おばあちゃん」がいっぱい。
孫の世話に駆り出されているわけですね。
休暇に起こりがちな問題
これだけ長い休暇を「みんなが」とるフランスなので、休暇中に起こりがちな問題というのも存在します。
日本ではまず滅多に体験しない、というたぐいの問題もあるのでご紹介しておきましょう。
- 病気の時に困る
- 深刻な渋滞が起こる
- 交通ストが行われる
- 子どもの休暇の預け先に困る
病気の時に困る
休暇中に病気になって困ってしまうのには2つの面がああります。
ひとつは、長期でどこかに滞在している場合、かかりつけ医の診察を受けられないという点。
リゾート地など滞在客で賑わうエリアでは、風邪やインフルエンザに罹ることもあるんですよね。
こういう時、現地で総合診療医を探して診てもらったり、処方箋を持って薬局を探したりと、意外と面倒です。
もうひとつは、かかりつけのお医者さんや専門医も長い休暇をとるという点。
それでなくとも予約がなかなか取れないフランスの医療機関。
「8月いっぱい先生はお休みです」
などとけんもほろろに言われてしまうことも…。
特に専門医の場合は、夏の休暇時期を避けて早め早めの予約が肝心です。
全国で深刻な渋滞が発生する
これは日本でも同じことですよね。
年末年始、ゴールデンウィーク、お盆など、多くの人が移動する時期は大渋滞発生のニュースが飛び交います。
公共交通機関がいまひとつ不便なフランスでは、自動車での移動が一般的。
家族での移動ならなおさら、車のほうが経済的ですよね。
で、みんな同じ日に同じ方向(地中海方面、アルプス方面)に高速道路を使うので大渋滞が発生するんです。
しかも、リゾート地の短期貸しアパートのチェックイン・チェックアウトは週単位でだいたい土曜日と決まっています。
そのため、バカンス時期の土曜日は特に渋滞が発生しやすくなるんですね。
交通ストが行われる
フランスでは、これも大きな頭痛のタネ。
毎年、夏の学校休暇開始時期、クリスマス休暇開始時期になるとなんらかの交通ストが行われることが多いんですよ。
国鉄のストだったり、航空管制官のストだったり、空港職員のストだったり…。
休暇前日から初日にかけて大規模ストを決行!というニュースが流れてきて大きなストレスになるんですよね。
トホホ体験①
一時帰国の当日朝からフランス国内全ての空港で「手荷物検査職員のスト」。ほぼ全ての国内線が麻痺したため、日本行きの乗り継ぎ空港まで行けず。空港業務再開は4日後だと言われて絶句。強硬に交渉した結果、お隣のスイスまで電車で移動し、翌日の飛行機に搭乗。
トホホ体験②
夏休み開始時期、空港手荷物の地上係員スト。大混乱の末、多くの荷物が国際線に積載されず。最終的に日本で受け取れたのは2週間後(友人の体験談)。
子どもの休暇の預け先に困る
あまりに頻繁に学校休暇があるため、子どもの預け先に困る家庭も多いです。
祖父母が元気な場合は、率先して預かってくれるという家もありますが、みんながみんな元気なおじいちゃんやおばあちゃんがいるとは限りませんよね。
そのため、フランスでは学童クラブや子ども合宿の仕組みが発達しています。
コロニーと呼ばれる子どもの合宿は、企業組合や自治体などが主体となって運営されています。
週単位でさまざまなテーマの合宿が企画され、なかにはイギリスやドイツなどの国外旅行も。
▼ フランス人にとってバカンスはとても大切なリフレッシュ期間。バカンスをいつとるか、どこで何をして過ごすのかは彼らにとって重要事項。フランス人のバカンスでよく起きる「あるある」をご紹介します。
まとめ
フランス人にとっての大きな関心事のひとつ「休暇」。
フランス人はなぜ長く休めるのか?
長い休暇をとって一体何をするのか?
フランスの典型的長期休暇とは
休暇が長いために起こりがちな問題
在仏15年以上の知見から、これらのポイントについて書いてみました。
家族の食卓での話題も、職場での話題も、「バカンス」の登場回数は本当に多いのです。
次の休みはどこに行こうか、何をしようか、いつも考えているフランス人。
バカンスこそが彼らの人生を豊かにする重要なエレメントなのです。