国際結婚で海外在住。
子どもたちが成長して、老後について真剣に考えるようになった。
老後ひとりになったら外国暮らしは辛そう。
日本に帰りたいけど、やっぱり難しい?
在外日本人のひとり、まのん(@ManonYoshino)です。
「老後」という人生のフェーズが近づいてくると、
老後はやっぱり日本がいいよね
という声をよく聞くようになります。
自分の場合、20代の頃の海外生活では、いつか日本が恋しくなるとはあまり想像していませんでした。
ところが、年齢を重ねれば重ねるほど「日本がラク、できれば戻りたい」と感じるようになってきたんですよね。
日本に帰省すると、「理解しなくては」と努力しなくても、すっと言葉が理解できることがとても快適。
子どもの頃から食べなれた食事が、日本でなら簡単にとれるという点も大きいメリットです。
海外では、やはり外国人なので「アウェーの緊張感」が続きますが、日本では「地元の安心感」を感じます。
この記事では
海外在住者が抱える老後の不安
老後日本に帰りたい理由と現実的な問題点
老後の本帰国に向けてできること
について考察していきます。
外国での老後がなんとなく不安に感じ始めている…というかた、ご一読いただければ幸いです。
目次
海外在住者は老後が不安
留学、仕事、結婚…。
日本人が海外に移り住む理由はいろいろですよね。
おそらく、移住当時は「海外に行ってがんばるぞ!」という前進のエネルギーで突き進んできたことでしょう。
国際結婚での移住なんて、「勢い」以外の何者でもないと言ってしまう人もいるくらい。
みんなそれぞれ「えいやっ!」という気持ちで海外に来ています。
そんなわけで、
「自分で望んで移住した海外でしょ」
なんて言われがちですが、やはり中高年になってくると、海外で送るであろう老後に不安を感じる人は少なくないようです。
海外での不安、どんな点なのでしょうか。
日本に頼れる家族がいなくなる
海外移住して長い人でも、なにかと実家の親御さんを頼っている人って多いですよ。
「親が食材をいろいろ送ってきて〜」
「子どもの教材を毎月、親に送ってもらっているの」
「今年の一時帰国はちょっと長めに実家で過ごそうかなあ」
これら、親が元気な間はごくごく自然に出てくる言葉。
でも、移住当時は元気だった日本の親たちも、年月と共に年を取ります。
遅かれ早かれ、一時帰国を楽しみに待っていてくれた親も亡くなり、実家もなくなる日が来るんですよね。
海外に住んでいて、日本に実家がなくなるって、不安なものです。
これ、「なくしてみないと実感が湧かない」かもしれません。
兄弟姉妹やいとこたちが日本にいても、そうそう頼るわけにもいかないのが現実。
▼ 国際結婚や就職などで海外在住の日本人が抱える「日本の親の老後への不安」。海外在住者の日本の親に対する不安に、「備えるべき10のポイント」をご案内します。
外国で高齢者になるのが心配
20代前半から半ばまでイギリスやカナダで生活していた筆者。
その頃は、周囲に同世代の独身の日本人が本当にたくさんいました。
留学生であったり、ワーキングホリデーであったり、海外就職して現地企業で働く人であったり。
でも、中高年というくくりに入る今、同世代の日本人は数えるほどしかいません。
20代のころの海外生活で一緒に遊び、笑い、泣いた、あの仲間たちはどこに行ってしまったのかと思います。
一部の国際結婚組をのぞいては、ほぼみんな20代後半までには日本に帰国して、就職し、結婚し、日本に定住する人生を歩んでいるよう。
つまり、少なくとも身の回りに「海外で高齢者として暮らす前例になる先輩」を見かけることがないんですよね。
これはヨーロッパの地方都市在住だからかもしれません。
海外在住日本人の多くは、20代から40代。
学生や現地採用の会社員、駐在員とその家族。
それから国際結婚して海外生活をしている人たち。
いわゆる現役世代ばかりです。
だから、自分がこのさき高齢者になったときの姿を想像することができないんですよ。
「高齢になったらどういう暮らしが待っているのか、不安」
と考えている日本人は少なくないですよ。
自分の健康が心配
海外の「医療アクセス」が、実は日本ほどよくないということが、コロナ禍で表面化したように感じます。
新型コロナのパンデミック期、日本の病床の空きが足りないと話題になっていましたよね。
それでも、平時には「かかりたいときにお医者さんにかかれる」のが日本。
そして、企業や自治体の健康診断の制度も充実しています。
社会保険制度がしっかりしていると言われる欧米の国は多いですが、医療アクセスはあまりよくありません。
かかりつけ医の予約が数日後、専門医だと半年以上待たないと予約が取れない、ということも少なくないんです。
人間ドックなどの制度もないので、一部のがん検診を除いては「罹ったら治療する」システム。
言葉の心配(医療用語がわかりにくい)も含め、医療アクセスの悪さから将来の自分の健康に不安を感じる日本人は少なくないですよ。
移動ができなくなる不安
海外在住日本人にとって、日本への一時帰国はとても楽しみなイベントなんですよね。
「今年の夏は〇〇さん、2ヶ月も日本に帰るんだってー!」
「うちは久しぶりに年末年始の帰省だよ」
なんていう会話が楽しげに飛び交うことも、海外在住者の集まりではよくある話。
でも、体のあちこちに故障が出てくる年代になると、
「いつかは日本に帰れなくなる日が来るだろうな」
なんて考えたりもするわけです。
いつでも自由に行き来できると思っていた故郷、日本。
自分の体力では長時間フライトが難しい…となったらどうしたらいいか。
当事者になってみないと、その切ない気持ちはわからないかもしれません。
老後は日本に帰りたい?
更年期の悩みがどうやら落ち着いた世代の日本人が集まると、
老後どうする?
という話題が持ち上がります。
子どもが現地語オンリーだし、このまま海外生活かな
という人もいれば、
子どもの教育が終わったら、日本に帰りたい
という人もいます。
夫が日本では暮らせないだろうから、帰れない
という人も。
それでも、
やっぱり老後は日本がいいよね
という話に落ち着くことが多いんです。
その理由は、主に次の5つです。
- 配偶者に先立たれた場合、一人では不安
- 言葉の不安がある
- 海外の老人ホームや介護施設に入所したくない
- 年を取ったら慣れた食べ物がいい
- やっぱり日本の生活がラク
詳しくみていきます。
一人になる不安
世界一長寿な日本人女性。
国際結婚した日本人女性の場合、統計上では、かなり高い確率で「未亡人」になりそうです。
異国の地で、配偶者に先立たれ、ポツンとひとりで暮らす自分を想像するとゾッとしますよね(もちろん、子どもたちや孫、友達に囲まれて賑やかに生きる老後も可能性はありますが)。
言葉がやはりストレス
年齢を重ねていくと、耳も目も悪くなっていきます。
これって、読解力や聴解力といった言葉の理解力にもろに影響を及ぼすんですよね。
語学って若ければ若いほど習得が早いでしょ。
大人になって覚えた外国語は、習うのも一苦労ですが、維持するのもけっこう大変。
認知症を発症すると、母語以外の外国語を忘れる…ともいいます。
海外で、日本語しか理解できない高齢者がどうやって生きていくのか、不安しかないですよね。
高齢者施設が不安
日本でも高齢者のための施設はいろいろありますよね。
利用料もピンからキリまであって、ホテル並みの設備を誇る高額な施設もあれば、それなりなところも。
おまけに、入所希望者に対して施設の空きがなくて、簡単には入れないという話もよく聞きます。
海外ではどうなんでしょう。
フランスでは、公立の老人ホームはそれなりの施設とサービスしかしてもらえないと聞きます。
居心地の良い施設に入所するには、やはり先立つものがかなり必要なようです。
日本人としては、居心地が良く、清潔で、プライバシーが保たれて、日当たりも良くて、入浴サービスも欲しいところ。
よく言われるのが、
「体が動かなくなって施設に入っても、ヨーグルトやフルーツコンポートやマッシュポテトの食事は嫌だな…。できたら、おかゆとお味噌汁がほしい」
という非常にベーシックな希望。
海外の高齢者施設では、とてもかなわない「小さな希望」ですけどね。
食事はやはり重要
不思議なんですが、年齢を重ねると食の好みは原点に帰っていくみたいですよ。
若い頃は、「肉・ワイン・チーズ・パン」で幸せに食事をしていても、だんだんとその好みが変わってくるんです。
野菜中心で…。
脂っこいものは苦手…。
できたらご飯とお味噌汁が欲しい…。
と、いう具合に…。
「40歳過ぎたら、欧米の脂っこい食事が胃にもたれて…」
というのはよくある話。
在外日本人の本当に多くの人が、日本の味を求めて、自分で味噌を作ったり、麹を作ったり、和野菜を栽培したりしています。
とにかく外国に住んでいる日本人は、日本に住んでいる人がびっくりするほど、和食党が多いように思いますね。
生活快適度は日本が高い
生まれ育った国なので、やはり日本人にとっては自分の国が快適度が高いように思います。
自然災害も多いし、夏はとても蒸し暑いし、生活環境は決して楽園ではないんですけどね。
それでも、
● 移民としての不当な扱いがない
● テロや犯罪がそれほど多くない
● 日本語は母語で、見ただけでスッと理解できる
● 兄弟姉妹や甥や姪、友達、いとこなどがいる
● 人々が礼儀正しい
● お役所の仕事がきちんとしている
● サービス業の人々がちゃんとサービス業に徹している
など、高齢になった日本人には、やはり日本が住みやすいのではないでしょうか。
老後日本に本帰国する問題点
老後は日本に帰りたい。
自分の生まれた場所に戻りたいという、この気持ちはごく自然なものです。
でも、結婚して家庭を築き、海外にベースを持って暮らしてきた人が、高齢になって日本に本帰国するのは実は簡単ではありません。
考えなくてはいけないポイントとして、次のようなものがあるでしょう。
住居は確保できているのか?
老後の生活資金は大丈夫なのか?
外国人配偶者は賛成しているのか?
子どもたちはどこに住むのか?
日本にいざという時に頼れる親族や友人はいるのか?
ひとつずつみていきましょう。
日本での住居はどうするのか
親世代が介護施設に入居したり、亡くなったりした場合、住居をそのままにしておけなくて処分するケースがわりとあります。
家は、住んでいなくても維持費はかかるし、メンテナンスも欠かせません。
そして、空き家にしておくと、家ってすぐに傷みますよね。
兄弟姉妹の間での相続の時に、実家を売って現金で等分にわけるのも現実的な方法です。
共同名義で相続しても維持費の負担でもめることも。
また、一人が相続しても、相応の金額を他のきょうだいに支払う必要がでてきたり。
結局、維持し続けるのが大変だということで、売却を考えるご家庭も少なくないようです。
でも、そうなると、日本には長期滞在できる住居がなくなるわけです。
老後日本に帰りたい、と思っても住むところが確保できない…という問題が生じてくるわけですね。
「無職の高齢者」として本帰国した場合、賃貸物件を借りるもの難しいことが多いようです。
収入がない、保証人がいない、本人が高齢…など、物件探しのハードルは高くなりがち。
将来、日本への本帰国を考えるなら、住居をどう確保するのかが、まず最初に考えなければいけないポイントでしょう。
▼ 海外在住で「日本に実家がない」と、現実にどんなことに困るのでしょうか。日本の親族の高齢化が進めば、いつかは直面する可能性が高い実家の処分。実家がない海外在住者の帰省先も合わせて、ご案内します。
https://kotobalog.com/no-parents-home-in-japan/?p=8095
老後の生活資金は大丈夫なのか?
お金のことも気になりますよね。
「老後日本に帰りたい」というのは、生活の基盤を完全に日本に移す…という意味なのかどうか、ここは重要です。
よく、
「年をとったら、1年の半分は海外で過ごし、あと半分は日本で暮らしたい」
という話を聞きます。
これ、現実には二国間の二重生活になるわけで、経費はもちろんかかりますよね。
ざっと考えても、
移動するための航空券代はどうするか
健康保険はどちらの国で加入するのか(もう一方の国では旅行保険をかける?)
賃貸ではなく持ち家に住むなら、固定資産税をダブルで払う?
車はどうするのか
など、お金がからんでくる問題がいっぱいありそうです。
外国人配偶者の意見
既婚者であれば、もちろん夫婦間の意見の擦り合わせも大切。
「ずっと相手の国で我慢してきたんだから、老後は日本!」
という声もあります。
当然といえば当然の言い分ですが、「自分が大変だったから、次に我慢するのは相手」という考え方はちょっと寂しいかもしれないですよね。
誰だって高齢になってできることが少しずつ減っていく時、慣れた環境で暮らしたいと思うでしょう。
仮に、高齢になった外国人配偶者を連れて本帰国した場合、日本人である自分が彼(彼女)のハンデを全部背負う覚悟も必要です。
国際結婚は、高齢になってからのほうが困難が多いのかもしれないですよね。
子どもたちはどこに?
「自分は日本に帰りたいけれど、我慢するしかない」
という人の多くは、子どもたちが生まれ育った居住国に住み続けるから、という理由をあげます。
できれば近くに住んで、子ども世代の子育て支援をしたいと思う人も多いです。
また、自分が身動きできない状態になった時に、やはり子ども世代になにかと手助けを頼むことも出てくるだろうから、という心配もあるでしょう。
入院時の書類の準備を頼む…などというとき、わざわざ海外から子どもを呼びつけることも難しいでしょうから。
日本に頼れる人はいる?
自分が高齢者になった時、日本に頼れる人がいるのか?ということも考えておかなくてはいけないポイントです。
順番で行けば、自分が高齢なら親はすでに他界している可能性が高いですよね。
兄弟姉妹も、それぞれ年をとりますし、それぞれの家庭を持っているでしょうから、そうそうお世話になることもできないかと思います。
友達だっていつまでも元気でいるわけじゃないでしょう。
「介護をしてもらう」という意味ではなく、日本で生活するならやはり何かと人の手を借りなくてはいけない場面も出てくると思うんです。
いざという時、入院や介護施設入所などの手続きを頼める人が必要になってくるのではないでしょうか。
老後日本に帰るために何をすべきか?
あれが大変、これも大変…と、老後本帰国がいかに大変かということばかり書いてきましたが、かといって、必ずしも即あきらめることもありません。
老後日本に帰るためには何をしておいたらいいのか、そこを知ることから始めてはいかがでしょうか。
老後本帰国のシュミレーションしてみる
「隣の芝生は青い」といいますよね。
外国生活を送っていると、その国での暮らしのネガティブ面が大きくクローズアップされがちだったりします。
いま住んでいる国や場所って、批判の対象になりがちですから。
いちど老後に日本に帰国することのメリットとデメリットを考えてみるといいかもしれません。
◆ 老後本帰国のメリット ◆
✔︎ 日本語環境に戻れるので精神的にラクになれる
✔︎ 子供の頃から慣れ親しんだ食事を楽しめる
✔︎ 移民としての海外ストレスから解放される
◆ 老後本帰国のデメリット ◆
✔︎ 配偶者と意見が合わない可能性がある
✔︎ 外国人配偶者と一緒の帰国の場合、相手のハンデを背負う覚悟が必要
✔︎ 居住国の家財の始末や引越しが大変
✔︎ 親族(子どもたち)と遠く離れる可能性がある
✔︎ 若い頃住んだ日本と高齢者としての日本の生活は違う
さらに、居住国に住み続けるメリットも洗い出してみるといいでしょう。
意外と、
「住めば都になってるぞ!」
と気づくかもしれません。
お試し帰国をしてみる
海外に移住してから、子育てや仕事で忙しくしてきた日々。
長期で日本に戻ることはあまりなかった、という人が多いのではないでしょうか。
老後は日本に帰りたい…という気持ちが大きい人は、「お試し帰国」も考えてみてもいいのではないでしょうか。
数週間とか1ヶ月とかではなく、できたら1年くらい日本に住んでみるんです。
短期間の一時帰国は、意外といつも夢のようにあっという間に過ぎていたと思います。
いつも、
「もう少し長くいたい」
と思いながら日本を後にしていたのではありませんか?
いちど、長期間まとめて滞在してみると本当の気持ちが見えてくるかもしれません。
蝉時雨の日本の夏が懐かしいと思っていたけれど、耐えられない蒸し暑さだった
冬のカラッと晴れ上がった青空が恋しいと思っていたけれど、家の中も底冷えでけっこう辛い
近所付き合いや自治会が、じつは自分には馴染めないことがわかった
なんてこともあるかもしれないですよね。
または、もう居住国に戻りたいと思えないくらい日本の居心地が最高!と思うかもしれません。
家族でよく話し合う
配偶者がいて子どもがいて、という場合、自分一人が希望してもことは進みません。
一緒に人生を歩んできた配偶者と、まずはじっくり話し合うことが大切かと思います。
さらには、子どもたちの意見も聞いてみることが必要です。
親は親、子は子、といいつつも、何か緊急のことがあれば子どもたちにも大きく影響しますので…。
理想通りにいかない現実も受け止める
老後は自分の国で暮らしたい…、こう思うのは至極当然のこと。
やはり、どんなに慣れた環境でも、外国語が堪能でも、海外生活はそれなりにストレスとの戦いでもあります。
いつも移民であること、外国人であることの緊張感を持って暮らしている人が大半じゃないでしょうか。
だから、老後本帰国を考えてみたいという気持ちは、正直な気持ちなんだと思います。
これを書いている筆者も、できたら日本に戻って老後を暮らせたら理想だなとは考えています。
でも、人生って理想通りにいくわけじゃないですよね。
配偶者が「日本でずっと暮らすのは無理」と言うかもしれないし。
自分自身が大病を患って、移動するのは無理になってしまうかもしれないし。
または自分の気持ちだって変わるかもしれませんよね。
思い通りに暮らせないかもしれない、という現実もあるわけです。
もしかしたら、思い通りの老後にならない、という人のほうが多いかもしれません。
理想通りにいかない現実も受け止める覚悟がいる、ということですね。
まとめ
国際結婚をしている人の多くは「ご縁があった人がたまたま外国人だった」といいます。
そして、配偶者の母国で暮らす日本人も決して少なくありません。
仕事や子育てで一生懸命に海外生活を頑張る人も、老後が見えてくると
「年を取ったらやっぱり日本がいいなあ」
となるんですよね。
自分で選んで来た海外、でも年を重ねるごとに生まれた国日本の
アウェーではない居心地の良さ
に気づいてしまう場合も多いです。
筆者自身、老後のことはまだまだ手探りで情報を集めている状態。
これからもリサーチを進めて情報のアップデートをしていきたいと思います。