
フランスは「カップル社会」だと聞いた。
それってステキだなと思うけど、国際結婚の日本人は意外と苦労するらしい。
いったいどういうこと?
こんにちは、まのん(@ManonYoshino)です。
なにごとにつけ「カップル単位が標準値」のようになっているフランス。
よくアムール(愛)の国とも呼ばれ、男女カップルに限らず、同性カップルもアツアツぶりを臆面なく見せつけている場面に出くわします。
そして、仲睦まじい雰囲気だったカップルが「実は別れた」と聞いて驚いていると、あっという間に次のパートナーと暮らし始めた…という話も珍しくありません。
熱く激しいフランスのカップルたちですが、このカップル文化に戸惑ってしまう日本人も…。
この記事では、
フランスのカップル文化の実態
フランスのカップル文化に戸惑う日本人
カップル社会のメリット
についてご案内していきます。
フランスのごく普通の人々の暮らし、のぞいてみませんか?
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目次
フランスはカップル文化の国
「フランスといえば…」に続く言葉は何でしょうか。
グルメの国、芸術の国、ファッションの国? ちょっと暮らしたことがあるよ、という人なら、もしかして、ストとデモの国なんて答えるかもしれませんね。
フランスで暮らしていて強く思うことの一つが、カップル社会という点。フランス人を見ていると、やはり「アムール(愛)」をとても重要視しているように感じます。
英語圏で生活していた時や日本でもあまり感じませんでしたが、フランスは「カップル」という単位が社会のベースになっているように思います。
そして、婚姻という法的な契約にとらわれず、自由な結びつきを選ぶ人多いのがフランスのカップル社会の特徴でしょう。
その様子をいくつか例を挙げてみていきましょう。
「ファミリー」とはカップル+子供たち
日本で「家族」といった時、同居している親族の全体を思い浮かべるのではないでしょうか。
独身が長かった自分ですが、妊娠したときに読みはじめた妊婦雑誌で、「へーっ」と思ったことがあります。それは妊娠判明と同時に夫婦は「パパ」「ママ」になるというカルチャー(実際は夫婦それぞれですが、メディアはそう謳っている!)。
そして、子供が巣立つまで子供中心に家族生活がまわっていく…というイメージを持ちます。
フランスはそこが違います。
フランスでは、家族とは「カップル(夫婦や同棲カップル)」があくまでも中心にあって、そこに子供たちがプラスされる…という考え方。
大人の世界がまず優先。
親の友人たちが集まるディナーなどでは、子供は先に食事を済ませて8時には子供部屋に。そこから大人たちは食前酒を楽しみ、ディナーと深夜までのおしゃべりに興じるのです。
夫婦の寝室には夫婦のためのバスルームがあり、それは夫婦だけのもの。子供たちは「子供&ゲスト」用のバスルームを使うという明確な線引きをしているお宅も少なくありません。
そしてヨーロッパでは「あるある」ですが、子供は赤ちゃんの時から自分の寝室で眠ります。
ソーシャルイベントはカップル単位で
友人・知人のホームパーティーや、結婚式はもちろんカップル単位で出席。それだけでなく、例えば同窓会や職場のパーティーなども配偶者やパートナー同席がごく普通なフランス。
初対面の人が多い着席型のパーティーでは、カップルが隣同士になるように席が用意されます。
ホームパーティーや親戚の集まりでは、カップルは離れた席に座るのが決まりで、主催者のマダム(その家の主婦)が席を指定して男女交互に着席。
男性たちは、隣に座ったご婦人にワインを注いだり、話題を色々提供したりして社交の輪を広げていくのです(というのが理想)。
平日の夜や週末、バーやレストラン、映画館などはカップルがいっぱい。若い人たちはグループでワイワイ楽しそうに飲みますが、中高年以上はカップルや友人カップル同士という組み合わせがほとんどです。
フランスを一人旅すると「レストランで一人ディナーが気まずい」というのはこういうシチュエーションだからですね。
老いも若きも恋をする
恋愛に年齢制限がないのはもちろんですが、フランスに住んでみて「フランス人って恋愛エイジレスだなあ」と本当に思います。
小学生あたりからカップルが誕生し(日本も同じですが、フランスの方が熱い感じがします)、学生が公園でピクニックしながら熱く愛を交わしている…というのは日常の風景。
でもフランスの場合、そこで終わらずに中高年の熱々カップルも多い!
子育て世代は仕事に育児に忙しく、人前で熱々ぶりを疲労している時間がなさそうですが、そこを過ぎると再び「アムールの国フランス」。
70代以上と見受けられるカップル、男性が女性の腰に手を回し「さも愛おしそうに」なでる…、これも日常の風景。手を繋いで歩く高齢カップルも多いです(逆に高齢カップルの方が中年カップルより手繋ぎ率が高いかも)。
いつまでも「セクシーさ」を目指す人々
街ゆくフランス人女性たちを見ていると、みなさんファッション面で共通しているのが「自分らしく、そしてセクシーで」という点。
若い女性のパンツ率は非常に高いのですが、年齢が上がるとスカートを好む人も多いようです。しかも、膝上だったりするので、脱毛サロンやペディキュアに通う中高年女性も少なくないようですよ。
「家では楽な部屋着、寝るのはスウェット上下」というフランス人女性はたぶん皆無かと…。ナイトウェアはセクシーさ重視で、スリップタイプのネグリジェ1枚(もちろん下着なし)か、パジャマならサラサラのサテン生地(もちろん下着なし)といったところでしょう。
フランス人カップルにとって「セクシーな時間」は高齢になったからといって終わらないのです。
強き女性の国の意外な亭主関白
気の強さで有名なフランス人女性。決して遠慮なんてせずに、言いたいことはバシッと言うし、不当な目に遭おうものなら絶対黙って引き下がったりなんてしません。
「あのご主人もきっとカカア天下で尻に敷かれているんだろうな」というご夫婦をよく見かけます。
ところが、よく観察していると「バリキャリで夫よりもキャリア上」みたいな女性ほど、家の中では夫を立てる妻なんですよね。一見、家事にもマメで子育ても主体的にやっている男性が実はマッチョ(威張っている)ケースがとっても多いのです。
そして、離婚率の高いフランスで、末長く円満でいるのは、「実は強い女が家庭では下手に出て夫を立てている」夫婦。
賢い女性ほど男性の扱いも上手い、ということでしょうか。
中高年女子と中高年男子
ふだんのホームパーティー以外にも、「50歳の誕生パーティー」「退職パーティー」などを名目に、自分で自分のお祝いに人を呼んでパーティーを開くフランス人たち。こういう場には、みんなカップルでやってきます。
そういった時に、お互い異性を「女子(Les filles)」「男子(Les garçons)」と呼び合います。
中高年が「はーい、こっちは男子が集まってぇ〜」などと、キャーキャー言っている場面に強烈な違和感を感じてしまうのは自分が日本人だからなのかもしれません。
フランス人にとって、いつまでも女子は女子、男子は男子。お互いに「胸ときめく(かもしれない)異性」なんだなあと思いますね。
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フランスのカップル文化で日本人が戸惑うこと
カップル社会のフランス、もちろん日本人としては「えっ、なんで?」と感じることもたくさん!
「なるほど、これはいいよね」と思うこともありますが、どちらかというとネガティブに感じてしまうことも多いのではないでしょうか。
文化の違いなので、どちらが正しいというわけではありませんが、なかなかすんなり受け入れ難いことも。
国際結婚でフランスに住むことになった人の多くが経験する戸惑いポイントの代表的なものを5つご紹介します。
● パーティーが体力と気力勝負
● お客を呼んでのディナーは家で
● ダンスといえばペア
● 疲れるバカンス
● 寝室と安眠に関する難問
ひとつずつご説明していきますね。
▼ 結婚したがらないフランス人はどういう「夫」になる? 国際結婚をした日本人妻からみた、フランス人旦那たちの「あるある」をご紹介します。

パーティーが体力と気力勝負
フランス人のパーティーは長いです。「時間きっかり、はい終了」の日本に慣れている人間にとって、永久に終わらないんじゃないかと思うくらいに。
結婚式を例に挙げてみます。
フランスの「よくある」結婚式の例 | |
15:00 – 17:00 | 教会で挙式 |
19:00 – 20:30 | パーティー会場の庭園にて食前酒 |
20:30 | 室内に移動、テーブルにつく |
21:00 – 22:00 | 前菜、つづいてメインディッシュが供される |
22:00 – 23:00 | 新郎新婦友人有志による出し物 |
23:00 – 24:00 | チーズが供され、その後デザート 新郎新婦がウェディングケーキをサーブ |
24:00 – 未明 | 食後酒、ダンス 最初のダンスは新婦と新婦の父によるワルツ、その後はクラブミュージックになり参列者は自由に踊り続ける |
翌朝 | 会場併設の宿泊施設に泊まった参列者の朝食 |
13:00 – 15:00 | 新郎新婦の親族と、会場の宿泊施設に泊まった参列者のランチパーティー |
ね、長いんですよ。
クリスマスや誕生日、日常のホームパーティーなどは、ここまで長丁場ではありません。でも、食前酒が20時に始まり、ディナーが終わると深夜ということはザラです。
外国人にとっては言葉の壁もあり、気力と体力勝負ですよ。
お客を呼んでのディナーは家で
友達とご飯食べようよ、などという時。フランスならまず間違いなくどちらかの自宅に招いて手料理を振る舞います。
ディナーで「持ち寄り」ということも少なく、ちゃんとテーブルについていただくコース仕立ての食事です。
20人くらいまでなら、自宅で食事を作って出すというのが一般的。
日本でよくある、「法要後のおときに料理屋を30人分予約」みたいなケースはレアかもしれません。
子供のお祝い事でいろいろな方を招いてコースディナーを出したことが何度かありますが、仕込みから調理、片付けまでものすごい労働量。
昔の日本も、こうやって冠婚葬祭を家でやっていたと思うと、主婦は本当に大変だったなあと思います。
ダンスといえばペア
人が大勢集まるパーティーといえば、必ず食後についてくるのがダンス。往年のポップスから最近のものまで、参加者の年齢層によって主催者も音楽は選んでいるよう。大きなパーティーではもちろんDJを雇います。
そしてこのパーティーのダンス、「いかにもカップル社会フランスだな」と思わせるのが、ペアが基本という点。老いも若きも男女が手を取り合い、体を絡ませながら踊るわけです。
欧米や日本のクラブでは、スローダンス(チークダンス?)以外は、それぞれ一人一人が踊りますよね。でもフランスでは少なくとも大人世代以上は、ペアなんです。
慣れていない人は、どう踊ったらいいのか戸惑うかもしれません。
疲れるバカンス
かなり有名かと思いますが、フランスはとにかく休暇が多くて長いです。
日本人としては、フランスの長い休暇はとても疲れるものなのです。その理由は、長い休暇を義実家や親戚の持ち家、レンタルアパートなどで過ごすため、気疲れや家事疲れがついて回るから!
頻繁にやってくる学校休暇
学校休暇という子供たちの全国的な休暇スケジュールがあり、次のようになっています。
フランスの学校休暇 | |
10月後半から11月初旬(2週間) | 諸聖人の日休暇(全国一斉) |
12月後半から1月初旬(2週間) | クリスマス休暇(全国一斉) |
2月初旬から3月初旬のあいだの2週間 | 冬休み(全国を3ゾーンに分け、1週間ずつずらして休み) |
4月初旬から5月初旬のあいだの2週間 | 春休み(全国を3ゾーンに分け、1週間ずつずらして休み) |
7月初旬から8月終わりまで | グランバカンス(中高生は、試験終了と同時に終わるため6月中旬以降が休みになる) |
全部で16週以上というやすみの大盤振る舞いですね。学校の教員もこの期間はやすみなので、生徒は休みでも教員は出勤している日本とは大違い。
で、これだけしょっちゅう休みがあるので、親も学校休暇の時期に合わせて長期休暇を取る人がほとんど。会社員だと、合計5週間の有給休暇を取得できます。
「バカンスのことばかり考えているフランス人」とはよく言われる言葉ですが、本当にバカンスへの情熱はすごいです。次はどこに行こうか、遊びの計画ばかり。
日本のように「塾の講習があるからどこにも行けない」「部活で忙しい」ということがないのです(実際は高校生以上は塾に通う人もいる)。
長期で義家族と一緒に過ごすことも多い
よくあるパターンは、実家もしくは義実家や、別荘で過ごすというもの。週単位での滞在になるため、義家族とずっと昼夜一緒となることも。
場合によっては、姑と小姑と2週間もれなく朝昼晩一緒という状況になります。義実家が苦手な人には、この辛さの予想がつくのではないでしょうか。
周りがフランス語しか話さない環境で、長期間過ごすのは辛い…という日本人も多いです。まるでフランス語強化合宿のようで、毎晩遅い時間にこってりした肉料理を食べる生活に胃腸もヘトヘト状態に。
バカンスは長けりゃいいというものではない、と日本人の自分は思います。
▼ フランス人はなぜ長期で休めるのか?休暇のための費用はどうしているのか?気になる方はこちらもどうぞ!

▼ バカンス好きフランス人、「普通の人々」はいったい何をして長い休みを過ごすのでしょうか。

寝室と安眠に関する難問
在仏の日本人の間で時々話題になるのが「寝室」。
誰でも加齢とともに睡眠の質は下がってくるものですよね。なかなか寝付かれなかったり、夜中に目が覚めてしまったり。
そして、年齢とともにひどくなるイビキ。眠りが浅くて困っているところに、パートナーの大イビキが重なると、イライラもつのります。
日本の中高年カップルは寝室を別にしているとか、シングルベッドにそれぞれ眠る…というケースが多いのではないでしょうか。
いっぽう、フランス人カップルは、高齢になっても仲良くダブルベッドで眠るのが普通なのです。全国的スタンダード、みたいなものです。
夫婦たるものベッドが別々なんてありえない、というのがフランス人の考え方。夫婦別室など「離婚の危機」ぐらいの反応なのです。
夫のイビキで年中寝不足でイライラさせられる妻も相当多いはずなのですが…。フランス人女性たち、ここだけは辛抱強いのかもしれません。
▼ 一般に「婚姻にこだわらない」と言われるフランス人。その彼らと日本人が結婚すると、いったいどんな点が大変なのか、6つに大きく分けてその内情をご紹介します。

フランスのカップル社会のメリットとは?
日本人から見ると「濃すぎて戸惑う」こともあるフランスのカップル社会、やはりそれなりのメリットもあります。
次の4つの点がメリットとしてあげられるでしょう。
- 精神的な安定が得やすい
- カップルで生活することで経済的
- 人生を豊かに生きられる
- 社会的に「自立した大人」と認められやすい
詳しくみていきますね。
精神的な安定が得やすい
カップルとして関係が良好であることが大前提ですが、お互いに支え合う相手がいるということで気持ちがラクになります。
ちょっとしたことでも、相談し合える相手がいるのは安心ですよね。
自分を頼ってくれる人がいる、自分を愛してくれる人がいるのは、生きていく上でとても心強いもの。
精神的な安定が得やすいのは大きなメリットでしょう。
カップルで生活することで経済的
家賃や光熱費など、カップル単位で生活することで経済効率が上がります。二人で暮らす住居費自体は上がるかもしれませんが、一人当たりの単価は安くなりますよね。
食費に関しても同様で、一人のためだけの食事を作るコストと複数人の食事を作るコストを比較すると、一人当たりの単価はやはり安くなります。
ここまでは、普通に同棲する場合と同じですが、「家族」という枠で考えるともっと明確に「経済的」。
フランス人が大好きなバカンスも、一人で旅をするよりパートナーと一緒のほうがなにかとお安くなりますよね。車を1台所有して二人で使えばかなり経済的。
人生を豊かに生きられる
誰かと人生をシェアしていくことで、自分だけの視野ではなく相手から見た世界をも共にのぞくことができるのではないでしょうか。
自分のことを例に挙げてみます。
独身の頃は仕事も一生懸命したし、一人で旅もたくさんしました。その意味では、いろいろな経験をし、生きていく上でのさまざまな知見を広められたと思っています。
でも、パートナーと暮らし始めてからは、彼が生きてきた世界も一緒に見ていくことができていて、人生をより深く味わえているように思うのです。
誰かと一緒に感動し、笑い、ときには一緒に悲しむ…。人生がより豊かになるような気がしませんか。
社会的に「自立した大人」と認められやすい
日本では「おひとりさま」文化がずいぶん定着してきました。結婚することなく、生涯独身という人も増えていますよね。素敵な生き方をしている独身の人もたくさんいます。
いっぽうで、フランスでは「カップルが社会の基本ユニット」みたいな社会通念がやはり根強くあるようです。なので、その基本ユニット(=カップル)であることで「自立してるね、大人だね」と社会的には認められやすいみたいですよ。
それでも最終的には「個人の自由」が最優先
ここまでカップル社会フランスについて、その実態やメリットなどご紹介してきました。
自己主張のカタマリで、自分の自由を最優先するフランス人。それなのに、「カップル」至上主義な社会ってなんかヘンじゃない?と思いますよね。
もちろん、一人になりたい人もいるし、あえて独身でいたい人もいます。なかなか適当な相手が見つからない人だってもちろんいるし、離婚や別離で「もう一度シングル」という人も大勢います。
一人でいる人を誰も否定したりしないし、個人の自由が最優先。
リベルテ(自由)の国なのです。
まとめ
フランスのカップル文化について、外国人目線から感じたことをご紹介しました。
アムール(愛)の国フランスでは、夫や恋人などパートナーと一緒に生活し行動することが多いカップル社会。
社会のさまざまなことが「カップル」単位になっています。
恋愛に関してとても熱心でオープン、いつでも誰かと愛し合っていたい…フランス人にはそんな「恋愛至上主義」のようなものさえ感じます。
でも自由を何より尊ぶフランス人たちですから、カップルであってもそうでなくても「それは個人の自由」。日本人が「馴染めない…」と感じがちなフランスのカップル文化ですが、「馴染まなくても、それはそれで自分らしくていいじゃない」と思えてしまうのがフランスのよいところかもしれません。